プレゼント

吉川 「ちょっと話があるんだけど」


藤村 「なになに? 楽しかったな、昨日」


吉川 「プレゼント交換したじゃん?」


藤村 「そうそう。お前だよな、俺のプレゼント当たったの。俺はほら笹咲のやつ。ワイヤレスイヤホン。たまたま持ってなかったからいいけど、持ってたらどうする気だったんだよな?」


吉川 「うん、それなんだけど」


藤村 「気に入ってくれた?」


吉川 「お前のプレゼント。盗聴器入ってたんだけど?」


藤村 「は? なんで?」


吉川 「やっぱ、お前も知らなかった?」


藤村 「なんでバレたん?」


吉川 「あ、知ってたんだ。逆になんでだよ。怖えーな」


藤村 「絶対バレないと思ったのに。信じられないな」


吉川 「信じられないのはこっちだよ。罪を認めたよね、今?」


藤村 「違う違う。それには事情があるんだって」


吉川 「なに、どういうこと?」


藤村 「まさかお前に当たると思ってなかったから」


吉川 「そういう問題じゃないだろ。じゃ、盗聴器を仕掛けようとしてるんじゃないか。その考え方が怖いって言ってるんだよ」


藤村 「だったら言わせてもらうけど、こっちだってお前なんかの元に行って迷惑なんですが? なんでお前が引き当ててるの? 最悪なんだけど」


吉川 「おいおい、言うに事欠いて。どうしてその感情でこっちにぶつかれるの? 罪悪感とかないの?」


藤村 「はっきり言ってお前に興味なんてないんだよ。盗聴器だってタダじゃないんだから。一体どうしてくれるんだよ」


吉川 「一切減速せずに突っ込んできたな。まず根本の問題として盗聴しちゃダメだろ? 相手が誰であろうとも。それをやってることはどうなんだよ?」


藤村 「それはお前の不都合だろ? こっちだってお前のところなんかに行って迷惑なんだから、もうこれはお互い様ってことじゃない?」


吉川 「イーブンまで引き上げてきたか。屁理屈のみを。正義ゼロの屁理屈をよく自らの罪をカバーするまで引き上げたな。全然違うだろ、俺の方に非はないんだよ」


藤村 「はぁ? 人は生まれながらにして罪を背負ってるんだぞ!?」


吉川 「知恵の実食べたところまで巻き戻るの? アダムとイブせいで俺は盗聴器仕掛けられたことを正当化されてるの?」


藤村 「これに懲りたら、二度と他人の悪事を暴こうなんて邪なことを考えないように」


吉川 「真っ直ぐにきちんとした声量で言えばまかり通ると思っている? 自分で悪事という認識がありながらその引かなさはなに?」


藤村 「逆にお前は何を根拠に俺に対して不当な罪を着せようとしてるの?」


吉川 「盗聴してるだろうが!」


藤村 「人ってのはな! 生きてくために他の命を奪わなければならない! 他人に奪われる前に奪わなければならない! すべての勝者は敗者の屍の上に立つ! 誰も傷つけずに生きるなんてのは夢想家が描く絵空事なんだよ!」


吉川 「待て待て。そのスケールの大きな議論を持ちだして、現実の罪をちょろまかすのやめてくれない? 盗聴はしてるんだよね?」


藤村 「ああ。盗聴はしてるし、二酸化炭素を排出して地球の寿命も縮めてるよ」


吉川 「関係ないよ、二酸化炭素は。そこは不問にする」


藤村 「お前は地球の悲鳴が聞こえないのか?」


吉川 「聞こえないよ! そんな概念みたいな問題は今関係ないだろ!」


藤村 「だったら聞いてみろ。ほら、仕掛けてあるから。面白いぞ?」


吉川 「それも盗聴!」



暗転

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