料理番組

吉川 「ハレの日料理、本日は料理研究家の藤村さんです。藤村さん、よろしくお願いします」


藤村 「よろしくお願いします」


吉川 「本日のメニューはなんでしょうか?」


藤村 「はい。今回は、クリスマスにピッタリ、チキンの美味しい風ローストです」


吉川 「チキンの……? え、なんですか? おいしい風?」


藤村 「チキンの美味しい風ローストです」


吉川 「美味しい風? ブルゴーニュ風みたいな感じですか? 美味しい風って聞いたことないですけど」


藤村 「こちら美味しい料理に飽きた方にも喜んでもらえる料理になってます」


吉川 「美味しくはないんですか?」


藤村 「それは好みによります」


吉川 「あ、好みなんだ。美味しいってわけではないんだ?」


藤村 「あくまで美味しい風ですから」


吉川 「できれば美味しくしてもらいたいものですね。はい、ではこちら、材料の方になります」


藤村 「まずチキンが200g、こちらはどの部位でも構いません。あとは人参玉葱などの根菜、こちらは冷蔵庫にあるもので十分です。あとは和牛のギャビビを4kg」


吉川 「和牛のギャビビ? それはなんですか?」


藤村 「一頭の牛から5gしか取れない希少部位ですね」


吉川 「え? それを4kg?」


藤村 「もう全部買い占めます。肉屋から文句言われるくらい」


吉川 「ちょっと待ってください。チキンのなんとかですよね? 牛肉が4kg?」


藤村 「ギャビビ」


吉川 「そのギャビビが4kgだったら、もうチキンのメニューじゃないでしょ」


藤村 「それを言い出したらお米の牛丼とか言いますか?」


吉川 「いや、言わないけど。丼の部分に米のって意味が含まれてるじゃないですか」


藤村 「お米のカレーって言いますか?」


吉川 「カレーライスって言うでしょ」


藤村 「じゃ、あの……。腐敗した国会って言いますか?」


吉川 「いや、急に政治色だしてくるな。なにそれ。政治家の大部分が腐敗してるって言いたいの? 全然料理と関係なく鋭い切れ込みを入れてくる」


藤村 「とにかくメインはチキンですから」


吉川 「ではそのギャビビがない時は、牛肉の他の部分でも?」


藤村 「もしない場合は金の力でなんとかしてください」


吉川 「金の力で?」


藤村 「はい。金です。銭」


吉川 「そういう視聴者への強い方は良くないんじゃないですかね? なにか代わりになる部分は?」


藤村 「ダメです。ギャビビじゃないと。食えたもんじゃないんで」


吉川 「それは料理の調整で食えたものにしてくださいよ」


藤村 「それでは材料を食べやすいサイズに切りまして、こちらのギャビビに火をつけて焼いていきます」


吉川 「あ、ギャビビって脂の部分なんですか?」


藤村 「そうですよ? この火で焼くのがポイントで。だから言ったじゃないですか。チキンの料理だって」


吉川 「すみません。食材なのかと」


藤村 「それをカレーライスだの、政治家が汚職をしているだの、あんな保守的なジジイどもにこの国は任せられないだの言って」


吉川 「そんなに言ってないです。後半は全然言ってないです」


藤村 「でこのまま48時間焼き続けます。片時も目を離さないでください」


吉川 「片時も? 48時間ずっと?」


藤村 「そうですね。野生動物と一緒です。目を離した瞬間一巻の終わりです」


吉川 「それはちょっと難しいんじゃないですかね。年の瀬に」


藤村 「言いますか? 熊と睨み合ってる時に『年の瀬なんで難しいです』って」


吉川 「いえ、なんで熊と一緒なのかもわからないし」


藤村 「もしどうしてもお時間のない方は、レンジで2分加熱してください」


吉川 「一緒なの? それの効果は。ギャビビで48時間と」


藤村 「48時間かけた方がほんのりいい香りがつきますね」


吉川 「ほんのりだったらいいですよ。レンジで。ほんのりのために丸2日使えないもの」


藤村 「そしてこれが48時間片時も目を離さずに焼き続けたものになります」


吉川 「あ、用意してるんですね」


藤村 「こちらを盛り付けて完成です。チキンと焦げのグチャグチャ焼きです」


吉川 「明らかな失敗!」



暗転

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