クイズ

吉川 「さぁ、一問正解で現在1000円獲得ですが、続いて二問目。これに正解すると1万円の獲得となります」


藤村 「やめます」


吉川 「ん? いえ、これから二問目ですが?」


藤村 「降ります」


吉川 「え? 降りるって、現在まだ1000円だけですよ?」


藤村 「はい」


吉川 「いや、え? 1000円でいいの? そんなわけないですよね? 最終的に1億円を目指すチャレンジなんですが?」


藤村 「はい、降ります」


吉川 「1000円だけだよ? あなた結構厳しい抽選を通り抜けてここに座ってるんですよね。1000円だけ貰って帰るってことありえます?」


藤村 「う~ん。……やめます」


吉川 「悩むんならせめて1万円にしてからにしません? 1000円で帰るとなると交通費でなくなっちゃいません?」


藤村 「自転車で来たんで」


吉川 「別に交通費だけでもなくてね。結構待たされたでしょ? オーディションの手続きなんかもありましたし。それで1000円だけって割りに合ってなくありません?」


藤村 「でも間違ったら1000円も貰えないんですよね?」


吉川 「それはそうだけど、1000円が欲しいなら、こんな番組に来ないでバイトでもしたらどうですか?」


藤村 「今色々と不景気で」


吉川 「そうです。だからこそ番組の中では景気の良いところを見せたいんですよ。1000円持って帰る挑戦者がいたらしんみりしちゃうじゃん。世知辛さを見せつけてどうするの」


藤村 「でも、やめます」


吉川 「こうしてる間にもう一問だけやって1万円にしてみたらどうですか? それから考えたら」


藤村 「でも間違えたら1000円なくなるんで」


吉川 「あの、ぶっちゃけ10万円までは誰でもわかるような常識問題なんですよ。そこはまだ助走の部分だから。全然いけると思います」


藤村 「さっきの問題もたまたま正解したんで」


吉川 「あ、そう。そういうこともあるかもしれませんが。わかりました。じゃあこうしましょう。もし次が不正解でも、私が個人的に1000円あなたにあげますよ。それならもう損はないわけですし」


藤村 「えっと。じゃあ、今その1000円もらっていいですかね?」


吉川 「なんで? 違うよ。挑戦するのと引き換えってことだから。ただ単に1000円あげるわけじゃないから。結構強いな、1000円に対する執着が」


藤村 「1000円だけですか? 次の問題に挑戦するの」


吉川 「そこを釣り上げようとしてる? もうゲーム性が変わっちゃうから。1万円貰えるんだよ、正解すれば。割と簡単な問題。多分いけるから」


藤村 「じゃ、もう1万円もらうのも一緒ってことですか?」


吉川 「それは全然一緒じゃないよ。正解しないと。簡単ではあるけどね」


藤村 「もし難しくて不正解ということになったら、あなたは詐欺ということになりますよね」


吉川 「なんで? 急に怖いこと言い出さないでよ」


藤村 「都合のいい甘い言葉で誘惑して私の財産を奪い取ろうとしてるわけですよね?」


吉川 「別にあなたの1000円が欲しくて言ってるわけじゃないんだよ。番組として盛り上げるために言ってるの」


藤村 「あなたの気持ちがどうであろうと、結果的にそういう取引を持ちかけてるわけで。こうやって大勢で追い詰める感じも脅威です」


吉川 「えっと。では結構です。藤村さんの挑戦は一問までということで。お疲れ様でした」


藤村 「いくらまででます?」


吉川 「はい?」


藤村 「さっき言ってた、二問目に挑戦するなら保証する額というのは、最大でいくらまでいけます?」


吉川 「いや、そういう問題でもないんで」


藤村 「だとしても、仮定の話で。たとえば出すならいくらまでいけます?」


吉川 「もっと番組自体をゲーム感覚で楽しんでほしいんですが、そんなにお金に執着してる姿勢でくる人はじめてだな」


藤村 「1万円貰えるなら、やります。もちろんその取引自体は裏の方でチョロっと」


吉川 「すごいズルを持ちかけてくるじゃん。応じたらこっちもなんか罪に問われそうな」


藤村 「なに、バレやしませんよ」


吉川 「完全に悪巧みの顔じゃない。そんなリスクを背負う義理はこっちにないんですよ」


藤村 「ファイナル・アンサー?」


吉川 「いや、そっちが聞くなよ!」



暗転

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