デスゲーム

藤村 「諸君、君たちには今から殺し合いをしてもらう」


吉川 「なんだって!?」


藤村 「ここから抜け出せるのはたった一人。一人になるまで殺し合うのだ」


吉川 「どこから来るんだ? 一体どのくらいの人数が?」


藤村 「あれ?」


吉川 「ん?」


藤村 「一人?」


吉川 「……はい。一人です」


藤村 「他の人は?」


吉川 「いや、自分気づいたらここに一人で?」


藤村 「まじで? 遅刻?」


吉川 「遅刻とかあるんですか?」


藤村 「参ったなぁ。だからルーズな奴らは嫌いなんだよ。死んで当然だよ」


吉川 「そうですね。でもこれって結果的に言えば……」


藤村 「どうすっかな、再試合かな」


吉川 「え? でもあれですよね? 不戦勝ではあるけど、ある意味勝ってることにはなりますよね?」


藤村 「なにが?」


吉川 「えっと、私が最後の一人に残ってるというのは事実なわけで」


藤村 「あー、なるほどね。だからなに?」


吉川 「私はこれで生還できるってことでは?」


藤村 「いや、だってそれは違くない? こっちは別に最後の一人を選びたいわけじゃないんだから。殺し合いを見たいんだから」


吉川 「まぁそうですけど。おっしゃることはわかりますが。でもルールに基づいてやるからこそゲームが成立するのではないでしょうか」


藤村 「あのさ、すごい理屈で言ってくるけど、わかってる? こっちはデスゲームの主催者なんだよ? 正論言われて『あぁ、そうですか』で引くような相手だと思ってる?」


吉川 「全くおっしゃる通りなんですが、こうやって話せるのも最後の機会になりそうなので」


藤村 「こんなことはこっちも初めてだよ」


吉川 「あの、これで勝ち抜けじゃなかったとしてもですね。なんていうか、次の試合で有利になる措置とかっていうのは可能ですか?」


藤村 「ズルしようっていうの?」


吉川 「いえ、ズルっていうか。せっかくなんで」


藤村 「いいねー。そういう生きるために何でもしようという意欲は大好き。いいよ。なにか欲しい物ある? 武器?」


吉川 「あ、武器いいですか?」


藤村 「全然いいよ。なにがいい? ハルバード?」


吉川 「ハルバードなんていいんですか?」


藤村 「いいよ。手荷物持ち込みOKだし。たまたま持ってたってことにすればいいでしょ」


吉川 「できればもうちょっといかつくないやつがいいかな。ハルバード構えてたら警戒されちゃうんで」


藤村 「そうだな。普通そんなヤツ全員で取り囲んで奪い取るよな」


吉川 「あとこれ、スタート待たなきゃダメですか?」


藤村 「どういうこと?」


吉川 「デスゲームなんですよね? そのあなたがデスゲームを開始するって言う前に先手を打って殺すってのはアリですか?」


藤村 「おいおい。天才か? デスゲームのプロ? よくそんなこと思いつくね」


吉川 「いえ、言ってみれば、一番の武器は情報ですから。開始して警戒される前に仕留めていけば常に優位に立てますし」


藤村 「確かにルールの裏をかいているが、アリでしょ。重要なのは『デス』の部分だから」


吉川 「わかりました。最高に楽しませることをお約束します!」


暗転


明転


藤村 「なーんちゃって。サプラーイズ! 吉川、誕生日おめでとう! ギャー!」


吉川 「まず一人……」



暗転

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