大きさ

藤村 「大きな生ハムを買ったんだよ」


吉川 「原木ってやつ? いいじゃん。どれくらい大きいの?」


藤村 「どれくらい? どれくらいって説明するの難しいな。えーとね、ブラキオサウルスいるじゃない?」


吉川 「ブラキオサウルス? 恐竜だっけ?」


藤村 「そうそう。あんまりわからない? 首が長くてドシーンてしてるやつ」


吉川 「ちょっとググるね。あー、これ! デカくない?」


藤村 「だいたい体長が25メートルくらい」


吉川 「でかいな! え? そんなでかいの?」


藤村 「いや、だから生ハムは、小さめのブラキオサウルスの足の指くらいの大きさかな」


吉川 「下手すぎない? さすがにもうちょっといい説明あるでしょ。小さめのブラキオサウルスってなによ」


藤村 「ブラキオサウルスだって生き物だから。大きめのも小さめのも、痩せてるのも太ってるのもいるからね」


吉川 「小さめで説明するならブラキオサウルスじゃなくてよくない? いるだろ、トリケラトプスとか」


藤村 「トリケラトプスは全然違うでしょ。小さめのブラキオサウルスと小さめのトリケラトプスじゃ全く大きさが違う」


吉川 「小さめの小さくなり加減がわからないんだよ。だったら小さめのブラキオサウルスと標準的なトリケラトプスじゃ、どっちが大きいんだよ?」


藤村 「そんなの比べられるわけないだろ」


吉川 「なんでだよ! せめて恐竜同士くらいちゃんとジャッジしろよ」


藤村 「ブラキオサウルスはジュラ紀後期だよ? トリケラトプスは白亜紀後期なんだから、もう1億年くらい時代が違うじゃん。メチャクチャなこと言うな」


吉川 「知らないもん。なにその子供電話相談室の恐竜にやたら詳しい子供みたいな発言。そんなにメチャクチャなこと言ってるか?」


藤村 「だってトリケラトプスは6千万年くらい前だよ? ブラキオサウルスは1億5千万年くらい前。言ってみればトリケラトプスと人間の方がまだ近い。お前がトリケラトプスにピンとこないのと同じようにトリケラトプスはブラキオサウルスのこと言われても『さすがに古すぎて草』って答えると思うよ」


吉川 「トリケラトプス、意外と若者っぽい喋り方するな」


藤村 「それを比べるなんて大林素子さんとトリケラトプスの大きさを比べるみたいなもんだよ」


吉川 「お前が最初にブラキオサウルスを出したんだろ?」


藤村 「だからそれは概念としてだよ。あくまで大きいということを示す概念としてのブラキオサウルスであって、そこに実在のトリケラトプスをだしてくるなんて無茶言うから」


吉川 「俺が言ってるの? 無茶を? ブラキオサウルスの例は俺以外の人はスッと飲み込めるわけ?」


藤村 「有識者はブラキオサウルスのブまで言ったところで『あ~、はいはい』ってわかると思う」


吉川 「わかり方がエグくない? 生ハムの話でブって言われてすべてを理解するの? 千里眼なの?」


藤村 「それを急に関係ないトリケラトプスを出されたりしたから、こっちも何の話をしてるのか理解に苦しんだよ」


吉川 「俺が悪かったんだ。良かれと思って出したトリケラトプスがまさかの大暴投だったんだ」


藤村 「話の流れぶった切ったからね。この人はなんで急にトリケラトプスの話なんてし始めたんだろうって不安だったよ。話の内容に一ミリもカスッてないのに異常者なのかと思った」


吉川 「そこまで? 似たようなものだと思ったのに。結局生ハムの原木ってどのくらいの大きさなの?」


藤村 「う~ん、上手く伝わるかなぁ。宇宙ってあるじゃん?」


吉川 「だから下手すぎるんだよ」



暗転

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