問題

藤村 「さてここで問題です」


吉川 「何だ急に?」


藤村 「俺は今日、良いことがあったでしょうか? なかったでしょうか?」


吉川 「4歳児みたいな問題を出してきたな。大人が真顔でそれに答えるの恥ずかしいよ。あったんだろ?」


藤村 「さて正解は? ダカダカダカ……。ダン! ジャカジャーン、キュィーン! ボンバボンボンボボンバン」


吉川 「長いな。ドラムソロからギターとベースにいかないでよ。ドラムで答えをくれよ」


藤村 「正解は……なかった! でした!」


吉川 「え? なに?」


藤村 「いいことは特にありませんでした!」


吉川 「なくないだろ? え? どういうこと? ないのにそんな問題を出してきたの?」


藤村 「はい」


吉川 「はい、じゃないよ。怖いよ。普通あるから発生する問題じゃない?」


藤村 「それがないんです。引っ掛けでした」


吉川 「引っ掛け? 何もなかった人がただ引っ掛けるだけの問題を出したの?」


藤村 「はい」


吉川 「はい、じゃなくて。その問題は有史以来あることが前提で出されてきたんだよ? 無からその問題を生み出したの人類史上初だよ?」


藤村 「裏の裏をかいたから」


吉川 「はぁ? 引っ掛けてどうするつもりだったの?」


藤村 「怒ってるの?」


吉川 「いや、怒ってるとかじゃなくて」


藤村 「さてここで問題です。吉川は今怒ってるでしょうか? 怒ってないでしょうか?」


吉川 「問題無限地獄? いや、怒ってないしむしろ不安だよ。怖いよ。お前の精神状態が」


藤村 「正解は……。ダカダカダカ……。ジャンジャンジャーン。ダカダン! 楽しい時間もあっという間、最後の曲になりました」


吉川 「ドラムが締めたあとにMCに行くなよ。それ一旦流れが滞るから二度とやらないで」


藤村 「正解は……怒ってる、でした!」


吉川 「お前のジャッジで決まったの? 俺が怒ってないって言ってるんだけど?」


藤村 「ギリギリで怒ってました。専門家じゃないと見極めが難しいレベル」


吉川 「呆れてるよ。怒るというより」


藤村 「あー、言わないで! 言わないでよ、次の問題」


吉川 「呆れてるかどうかなの? 俺の精神状態を俺に問題で出さないでくれる?」


藤村 「では最後の問題です。これは最後の問題でしょうか?」


吉川 「もう引っ掛けなのかなんなのかもわからない。そもそもなんで俺がその茶番に付き合わなきゃいけないの?」


藤村 「正解すればなんと! 何がもらえるでしょうか?」


吉川 「問題じゃん。入れ子構造の問題にしないでよ」


藤村 「本当に何かがもらえるのでしょうか?」


吉川 「もうパラドックスみたいになってる。何一つ確かなものがない」


藤村 「こんなに苦しいのに、なぜ人は生きるのでしょうか?」


吉川 「急に哲学をぶっ込んできたな。人に聞かずに自分なりの回答を出せよ」


藤村 「果たしてこんな問いに意味なんてあるのでしょうか?」


吉川 「ないよ。少なくともこのやり取り最初っから最後まで一つも意味はない。無だよ!」


藤村 「正解は……。チーツッツチーツッツ……」


吉川 「シンバルで静かに刻むなよ。それは正解発表じゃなくてシンキングタイムの音だよ」


藤村 「さぁ、正解は……発表されるのでしょうか!?」


吉川 「知らねーよ! するならしろよ。まじでもう付き合ってられないよ」


藤村 「なんで怒ってるの?」


吉川 「はぁ? 俺がなんで怒ってるのかわかんねーの?」


藤村 「問題かぁ」


吉川 「問題じゃねーよ!」



暗転

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