転売ファイター

藤村 「俺は転売ファイター藤村! 夢と希望のために熱い転売ファイトを繰り広げるぜ!」


吉川 「フッフッフ。これを見てもそう言ってられるかな?」


藤村 「お、お前は!? この街を牛耳る吉川コンツェルンの御曹司、吉川! 一体何をした?」


吉川 「お前が転売できないよう、この街の商品ははすべて我が吉川コンツェルンが買い占めた。もうお前にできる転売はない」


藤村 「な、なんてこった! それでも人の子か! 転売は夢と希望の象徴、それを阻むなんて絶対に許しちゃおけない。転売ファイトで勝負だ!」


吉川 「クックック。買う商品がないのにどうやって転売する気なのかな?」


藤村 「確かにその通りだ。こんな時に父ちゃんならどうする? 転売が叩かれ死んだ父ちゃんだったら……。そうだ! ひらめいたぜ!」


吉川 「どうするというのだ、藤村」


藤村 「俺の秘策、そいつはこれだ!」


吉川 「ハッハッハ。何をするかと思いきや、バカめ。そいつは食品じゃないか。食品には賞味期限がある。転売が出来ないから買い占めてないだけだ。そんなものを買っても買い手は見つからないぞ」


藤村 「燃え上がれ俺の転売エナジー。いっけぇ! これが俺の転売スピリットだー!」


吉川 「な、なにぃ!? まさか賞味期限の表示を書き換えただとー!?」


藤村 「それだけじゃないぜ、こいつは外側のパッケージを剥がして冷凍。そしてこれは食品風オブジェとして販売だーっ!」


吉川 「ま、まさか! なんてこった。オークションサイトでバカがどんどん買っていく!」


藤村 「倫理観のないクズは転売の味方さ! 買い手の頭の悪さを信じきれなかったお前の弱い心が転売の可能性を狭めてたんだ」


吉川 「くぅ。俺の完敗だ。まさかこんな転売があるだなんて。俺は大人しく真面目に商売するぜ」


藤村 「何言ってるんだ吉川! 俺たちは仲間じゃないか? 転売ネットワークの心は一つ。俺たちはみんな転売ファイターだぜ!」


吉川 「……藤村、いいのか? こんな俺でも」


藤村 「転売は誰も拒まない。未来を信じる心さえあれば十分さ」



  爆発



吉川 「な、なんだっ!?」


星人 「我々は転売星人。惑星を力で支配して金持ち星人に売るという、わかりやすく言えばサイヤ人と同じようなことをしてる星人だ」


吉川 「なんてこった。もうお終いだ! わかりやすく言ってくれるくらい地球の文化を熟知した転売星人になすすべなんてない!」


藤村 「諦めるのはまだ早いぜ!」


吉川 「ふ、藤村!? 一体どうするつもりだ?」


藤村 「転売のことなら酸いも甘いも噛み分けた、この転売ファイター藤村。燃え上がる転売スピリットは宇宙一だぜ!」


吉川 「そうは言っても、地球規模の戦いじゃもう俺達の手には負えない」


藤村 「俺は知ってる。転売の弱点を。この俺の生命を賭けてでも、転売星人に一泡吹かせてやるぜ! うぉおおおおおお!」


吉川 「藤村! 無茶をするな、それ以上やると死ぬぞ!」


藤村 「おおおおおお! 召喚! 宇宙税務署!」


税務 「こんにちは。宇宙税務署です」


星人 「ギャー!」


藤村 「ギャー!」


吉川 「藤村、お前の犠牲は忘れないぜ。この星を救った転売ファイターがいたことをな……」



暗転

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