モニタリング

藤村 「そこで仕掛け人として吉川さんが登場します。吉川さんはエスパーという設定で色々なドッキリを仕掛けてください。その反応をスタジオでモニタリングするという流れです」


吉川 「わかりました」


藤村 「まず手始めにスプーンを曲げてもらったり、時計を止めてもらったりします。少し大げさに、わかるように声なども出してもらって」


吉川 「わかりました。私はエスパー風に演技をすれば良いんですね」


藤村 「そうですね。エスパーみたいに普通に曲げてもらえれば大丈夫です」


吉川 「普通に? え? 曲がるスプーンみたいなのは?」


藤村 「スプーンの方はお店の方で出てくるものを使っていただいて」


吉川 「曲がるやつは? 曲げの能力はどう表現するんですか?」


藤村 「その辺りはおまかせしますので、普通に曲げていただければ」


吉川 「え? 私が? 自力で?」


藤村 「はい。エスパーなんで」


吉川 「いや、エスパーは設定でしょ」


藤村 「そうなんです。吉川さんはエスパーという設定で仕掛け人をやってもらいます」


吉川 「でも私はエスパーじゃないですよ?」


藤村 「そう言われましても、エスパーだったらというドッキリなんで」


吉川 「だからそういうのは仕掛けておくものじゃないんですか?」


藤村 「はい。事前にご自身でどうにかされるのは構いませんので」


吉川 「私のパワーで? そこを当てにされるの? 仕掛け人のパワーに頼り切りのドッキリなの?」


藤村 「あ、大丈夫です。あくまで主役はモニタリングをされる方で、吉川さんは仕掛け人ですからそれほど気にされなくても」


吉川 「だからエスパーじゃないから出来ないよ。エスパーのことは」


藤村 「でも仕掛け人としてこの仕事を受けたんですよね?」


吉川 「仕掛け人としては受けたよ」


藤村 「でしたらやってもらわないと。仕事ですので」


吉川 「仕事でエスパー能力まで求められるの? その基準で発注したの?」


藤村 「事務所の方には話が通ってると思いますけどね」


吉川 「せめてマジシャンみたいな人にしてよ。ボクは能力ないもの」


藤村 「今までの人生で時計が止まったってことは?」


吉川 「今までの人生でだったら、電池切れとかあるけど」


藤村 「じゃ、それをお願いします」


吉川 「俺の手柄じゃないんだよ。俺のパワーで電池切れにしてないんだから」


藤村 「そう言われましても、こちらはモニタリングするところがメインですので」


吉川 「見てるだけ? それはもうドッキリじゃなくて現実じゃん。私が実際にやっちゃったら」


藤村 「いえいえ、あくまでこちら側としては何が起こるのかは把握してますからドッキリです。ちゃんと医師や防災の方も準備してますので」


吉川 「エスパーが準備されてないんだよ! 医者を用意するならエスパーを用意しろよ」


藤村 「そんなこと言われても、エスパーってどこに連絡すればいいんですか?」


吉川 「知らないよ。少なくともうちの事務所じゃないよ。そういうのちゃんと説明してないから私が能力を要求されて困ってるんじゃない」


藤村 「そうですね。スプーンや時計の方は最悪上手くいかなくても大丈夫です。最後の目玉でですね、大爆発をするんですけどそこでなんとか吉川さんに生還してもらいまして」


吉川 「聞くの怖いけど、どうやって?」


藤村 「なんとかお願いします」


吉川 「こっち任せ!? 大爆発の生還を丸投げ?」


藤村 「失敗してしまうとモニタリングの方も上手くいかないので、どうにか成功していただいて」


吉川 「そりゃそうだよね。モニタリング以前に俺の命が上手くいかないもの。それをなんの備えもなく?」


藤村 「では逆にどうすれば可能になります?」


吉川 「それをこっちに聞くの? 考えておくのがあなた達の仕事じゃないの?」


藤村 「私たちはあくまでモニタリングがメインなんで」


吉川 「俺は少なくとも爆発メインじゃないから!」


藤村 「では本番参りまーす!」


吉川 「これはなに!? こういう形のモニタリングなの?」


藤村 「スタート」


吉川 「あ、違うの!? そういうわけでもないのか!」



暗転

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