吉川 「本当にお前と友人で良かったよ」


藤村 「俺も。親友って言えるのはお前だけだから」


吉川 「たまたまクラスで席が隣だっただけなのにな。もしさ、世界中の人の中で誰か好きなやつをあの席に座らせられるとしてもお前を選ぶよ」


藤村 「だったら俺は……」


吉川 「待ってくれ。だったら? だったらって何?」


藤村 「世界中の人から選べるんでしょ?」


吉川 「例え話だよ? 俺はお前がいいって話」


藤村 「俺はね~。どうせなら……」


吉川 「なに、どうせならって」


藤村 「世界中でしょ? 選び放題?」


吉川 「選び放題っていうかさ。俺の第一希望はお前っていう話なの。わかってる?」


藤村 「わかってる。第一希望となるとやっぱり……」


吉川 「そこは悩まないで出すべき名前があるでしょ? 話の流れ的に」


藤村 「誰? ジャスティン・ビーバー?」


吉川 「ジャスティン・ビーバーなわけないだろ! お前と無関係じゃん。なんでジャスティンが隣の席に座るんだよ。俺だろ」


藤村 「ジャスティンより?」


吉川 「お前、ジャスティン・ビーバーの人となりを知らないだろ? 全然性格合わないかもしれないぞ? ただ有名ってだけで選んでるだろ。そうじゃない。後に親友になる人を選ぶ枠なんだよ」


藤村 「確かにジャスティン・ビーバーは言葉も通じないからな。それにそもそも俺はジャスティン・ビーバーが何をやってる人かも知らない。有名な人ってことだけしか知らない」


吉川 「そんなやつがあのクラスの隣の席にいても親友にならないだろ?」


藤村 「でもジャスティン、授業とかも言葉がわからなくて困るだろうな。俺が手助けしてやらなきゃ」


吉川 「ジャスティンの助けはいらないんだよ! あいつはあいつでなんか上手いことやるだろ。金だってあるんだから。そういうことを言ってるんじゃないんだよ」


藤村 「お前、ジャスティンに冷たいな。同じクラスメイトだろ?」


吉川 「いないんだよ。ジャスティンは。クラスには。俺の席なんだから」


藤村 「そっか。お前の席か。だったらジャスティンはどこ? 後ろ? 笹咲の席?」


吉川 「笹咲の席には笹咲がいるんだよ! ジャスティンを気にしすぎて歴史を改変するなよ」


藤村 「だってお前が言い出した話だろ? 自由に歴史を改変していいって言われたら出席するだろジャスティンだって」


吉川 「ちーがーう! 親友枠の第一希望の話をしてるんだろ? あのクラスにジャスティンがいたところで親友にはならないよ」


藤村 「お前、ジャスティンに当たりが強いよな。なんで? 同じクラスメイトだろ? 仲良くしてくれよ。お前とジャスティンが揉めてると俺が板挟みになるんだよ」


吉川 「ジャスティン、寄ってくるなよ親友枠に。関係ない他人なんだよ」


藤村 「それはいくらなんでもジャスティンに聞かせられないな。ジャスティンもそうだけど、ジャスティンに席を譲った笹咲にだって失礼だよ」


吉川 「譲ってないだろ笹咲は! 笹咲は笹咲の席にいたし、今だって信用金庫だっけ? なんか勤めてるんじゃなかった?」


藤村 「知らないけど。笹咲とは卒業以来全然会ってないし。でも笹咲はジャスティンと揉め事なんて起こさなかった。お前はなんでいつもジャスティンに辛く当たるんだよ」


吉川 「当たってないよ。一度だってジャスティン・ビーバーに辛く当たったことないよ。無関係なんだよ」


藤村 「直接言わないでそうやって無視するのが一番悪質。お前って前からそういう陰湿な所あるよな」


吉川 「なんで俺の批判になってるの? いないやつのせいで」


藤村 「俺はお前との友情は疑ってないよ。ただお前がジャスティンと仲良くしてくれないのは心苦しく思ってる。できれば三人で遊びたいし」


吉川 「俺は面識ないよ。ジャスティンと。いや、お前もないだろうけど」


藤村 「だから少しずつでいいから二人には距離を縮めてもらって。まずお前とジャスティンが隣の席に座ってさ、俺の隣は笹咲に座ってもらうことから始めよう」


吉川 「そこ親友枠!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る