行き過ぎた発言

藤村 「確かに行き過ぎた発言だったかも知れません。でもそれもすべてこの国のことを思ってのことですのでご容赦いただきたいと思います」


吉川 「反省はしているのですか?」


藤村 「発言が過激になってしまったことは反省しております。しかし考え方そのものは間違ってるとは思っておりません。あくまでこの国のことを思って発言しただけです」


吉川 「その発言のあとにですね、外国人を軽視するような発言もありましたが、それについては?」


藤村 「はい。それも行き過ぎた発言でした。しかし、それも何より晩ごはんのことを思ってのことでしたので、ご容赦いただきたい」


吉川 「は? 何ですか? 何を思って?」


藤村 「晩ごはんです。何を食べようかなーと思って発言しました」


吉川 「それはつまり上の空だったということですか?」


藤村 「いえ、真摯に。ひたむきに晩ごはんのことを考えての発言です」


吉川 「晩ごはんのこと考えてる時点で真摯じゃないんだよ。これ以上無いほど気が散ってるでしょ」


藤村 「時間的にもお腹が空く時間でしたので」


吉川 「なんだよ、その言い訳。それを聞いてご容赦はできないでしょ」


藤村 「この国のことを一心に思ってのことです。一心に思いすぎてお腹が減ったということですので」


吉川 「それで晩ごはんのこと考えちゃったの?」


藤村 「あと例に出たのがアジアの方でしたので。カレーかな、とか思っちゃいました」


吉川 「カレーかな、じゃないよ。真剣に答弁してる最中に『カレーかな?』って思いながら答えてたの?」


藤村 「いえ、決して決めつけたわけではないです。屋台飯的なものもいいと思いましたし、今まさにこの時も何を食べるかを考え続けております」


吉川 「食いしん坊かよ。そうじゃないだろ。発言自体に多くの方が懸念を抱いていることは認識しているのですか?」


藤村 「もちろんです。国民の皆様あってのものですし。食欲あっての私でもありますから」


吉川 「食欲は関係ないよ。それはあなたの事情でしょ」


藤村 「途中までは本当にこの国のことだけをしっかりと考えてました。ただ時間が長いから集中力が切れちゃって。こうなるともう、何を食べようかしか考えられません」


吉川 「例えそうだとしても言わなくない? 食欲のことをこういう場で」


藤村 「皆様には包み隠さず気持ちを伝えたいと思ってますし、今はお前すごいうざ絡みしてくるなと思ってます」


吉川 「包み隠さず言い過ぎだよ。直で? なんのオブラートにも包まずに今の気持ち伝えにきた?」


藤村 「正直、もう帰りたい。どうせバカしか見てないし」


吉川 「正直すぎるのも大問題だよ。行き過ぎた発言を咎められてるのに、なんでそんなことを言えるの?」


藤村 「確かに行き過ぎた発言だったかも知れません。そこは反省しております。しかし私は信念を持っておりますし、その経緯で口が滑ってしまうこともあります。それもこれもこの国を思ってのことですので、ご容赦いただきたい」


吉川 「本当にこの国を思ってるの? どうせまた何食べる考えてるんじゃないの?」


藤村 「決してそのようなことはありません。皆様には包み隠さず伝えたいと思っております」


吉川 「じゃあ、今は何を考えてるのよ?」


藤村 「今のは左のキンタマが痒いな~と思っての発言です!」


吉川 「思っても言うなよ、それは。絶対に」



暗転

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