ジャスティン・ビーバー

藤村 「すみません。ジャスティン・ビーバーさんですか?」


吉川 「いえ? 違いますけど」


藤村 「え? 違います? 本当にジャスティン・ビーバーさんじゃない?」


吉川 「違います」


藤村 「あ、すみません。ここじゃ本当のこと言えないですよね」


吉川 「そうじゃなくて。本当に違います」


藤村 「えー? 本当? こんなにそっくりなのに。よく言われません?」


吉川 「いや、初めて言われました」


藤村 「嘘だー。本当の本当に違います?」


吉川 「違いますって」


藤村 「じゃあ、何ティン・ビーバーに当たるんですか?」


吉川 「すべての人類がティン・ビーバー属性なわけじゃないですよ? 逆にあなたは何ティン・ビーバーなんですか?」


藤村 「私は別にジャスティン・ビーバーを騙ったことないんで」


吉川 「俺だって騙ってないですよ!」


藤村 「本当に違うんですか?」


吉川 「そもそも、私ジャスティン・ビーバーさんよく知らないんですよ。名前を聞いたことはあるんですが」


藤村 「あー、逆に? 自分のことはよく知らないという哲学的な」


吉川 「違いますって。その、有名人なんですよね? 歌手?」


藤村 「いや、私もあんまり良く知らないんですが」


吉川 「知らないのに、よくその勢いで問いかけてきたな? 完全に確信がある人の詰め方だったよ?」


藤村 「でもほら、白いシャツ着てるし」


吉川 「この世で白いシャツ着てる人、ジャスティン・ビーバーオンリーだと思ってた?」


藤村 「顔もちょっと歯が出ててビーバーっぽいし」


吉川 「ジャスティン・ビーバーはビーバーっぽいからビーバーじゃないだろ! よく知らないけど、そんないじめられっ子みたいなあだ名のつけられ方じゃないと思うよ」


藤村 「そうなんですか? よく知ってますね。ジャスティン・ビーバーのこと」


吉川 「知らないんだよ! 知らないなりに違うことくらいわかるだろ」


藤村 「いえ、俺はあんまりこの世の理をすべて知っているわけじゃないので」


吉川 「俺だってそうだよ。全知全能に見えるか?」


藤村 「じゃ、本当にジャスティン・ビーバーさんじゃないんですね? 命賭けます?」


吉川 「小学生みたいな言質の取り方するな。別に違うから賭けてもいいよ」


藤村 「なんだ。紛らわしい。だったら最初からジャスティン・ビーバーじゃないです的な顔をしていてくださいよ」


吉川 「どういう顔? その複雑な文脈を表情一つで表せる人いる?」


藤村 「こうですよ。この顔を見てジャスティン・ビーバーだと思いますか?」


吉川 「思いませんよ。だって日本人の顔してるもん」


藤村 「ね? だからこういう顔を」


吉川 「それはあなたの顔だからでしょ? 俺は俺の顔をしてたらあなたが勝手に勘違いしたんだから」


藤村 「そもそもジャスティン・ビーバーってどういう顔してるんですか?」


吉川 「それはこっちが聞きたいよ!」



暗転

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