デスゲーム

藤村 「デスゲーム、いかがですかね?」


吉川 「いかがって?」


藤村 「参加してみませんか?」


吉川 「するわけないだろ。何を好き好んでそんな事せにゃならんのだ」


藤村 「あ、違います違います。主催者側で」


吉川 「主催者側? え? あの高みの見物をして殺し合う様をブランデー揺らしながら見る方?」


藤村 「そうです」


吉川 「そうですって。でもああいうのって大金持ちじゃないとダメなんだろ?」


藤村 「あ、ご興味おありで?」


吉川 「ないけど、そっち側の話を聞いたのは初めてだったから」


藤村 「最近はグンとお手頃価格になってるんですよ。四人制の1時間マッチなら1500円で主催者になれます」


吉川 「そんなに安いの?」


藤村 「はい。と言ってもですね、何人かの主催者の合同で開催することになるので、言ってみれば一口馬主みたいなもので」


吉川 「あー、なるほど。全部一人でってなると高いのね?」


藤村 「そうですねー。そうなるとやっぱり一万円とあと消費税くらいはかかりますね」


吉川 「でもそんなもんなんだ。デスゲームが」


藤村 「最近厳しいんですよ。デスゲームも」


吉川 「最近に始まったことじゃないだろ。そもそも法には則ってないわけだから」


藤村 「いやもうライバルが。ネトフリとかソシャゲとか。デスゲーム主催するより面白いとか言われちゃって」


吉川 「客を奪い合ってるんだ」


藤村 「でもデスゲームにはデスゲームならではの良さもあるんですよ」


吉川 「だろうね。それを良さと言っていいかはわからないけど。デスゲームにハマる人は他に代替はないだろ」


藤村 「主催してくれた方にはデスゲーム靴下もプレゼントさせていただいてます」


吉川 「ダサッ! いらないよ。デスゲーム靴下。どうコーディネートするんだよ」


藤村 「でも取引先の人と食事をするときに座敷に上がったときにチラリと見せると『おや? あなたもデスゲームですか? なんて話が弾んだり』」


吉川 「そんなやつと取引するなよ。最悪の人間性じゃん。人前でするような話じゃないよ」


藤村 「これから就活なんて人は、面接でイベントを主催しましたなんて話すこともできますし」


吉川 「デスゲームですって言うの? もう就活の面接自体がデスゲームみたいなもんなのに」


藤村 「上手いこと言いますね。デスゲームセンスがおありで」


吉川 「どんなセンスだよ。いらないよそんなの」


藤村 「私も早く主催者になってくれる方を見つけないと参加することになっちゃいそうで」


吉川 「そうなの? デスゲームに? それはなんか気の毒だな」


藤村 「いえ、この後の飲み会に。海鮮苦手なんですよねー」


吉川 「知らないよ、それは。どうとでもなりそうな事情でこっちの同情を誘うなよ」


藤村 「やっぱ、デスゲームより風俗行くほうが楽しいですか?」


吉川 「決めつけるなよ! 別に風俗行くなんて言ってないだろ」


藤村 「じゃ、デスゲームで」


吉川 「そんなキワキワな二択を迫るなよ。どっちも選ぶ義理はないんだよ」


藤村 「わかりました。GO TO HELLで7割引きならどうです?」


吉川 「そのGO TOはどこの機関が負担するんだよ」


藤村 「誰にだって死んで欲しい人はいるわけで。持ちつ持たれつですから」


吉川 「政府と癒着してたりするの? 最悪な社会だな。大体それでやっていけるの? デスゲームに参加する人には賞金とか出さなきゃいけないんでしょ?」


藤村 「あー、その点ならほぼみんな死にますから」


吉川 「だから大丈夫みたいな顔するなよ」



暗転

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