中継

吉川 「それでは街の様子を伺いましょう。中継の藤村さん?」


藤村 「はいはいー! こちらはですね、もうハロウィンムード一色ですね」


吉川 「そうですか。仮装をしている人などが多い感じですか?」


藤村 「仮装もそうですけど、なにより熱気がすごいですね。本場と同じように暴力と狂気が渦巻いてます」


吉川 「暴力と? え、それって大丈夫なんですか?」


藤村 「大丈夫ではないです。こちらもいつ襲われるのかヒヤヒヤしています。街では『お菓子をくれないと殴り殺すぞ?』の言葉が飛び交っております」


吉川 「そんな言葉ないんだよ。バイオレンス・オア・トリートは聞いたことない。強盗しか言わないよ、それ」


藤村 「おっと、死体のコスプレをしている方がいますね。踏まないように気をつけないと」


吉川 「それ、本当にコスプレですか? 映さないでくださいね」


藤村 「そしてこちらのイベントブースでは『魔女狩り保存の会』の方々による伝統的な魔女狩りを行っております」


吉川 「保存するなよ、そんなの。途絶えていいんだよ」


藤村 「参加者の女性の方の嬉しい悲鳴も聞こえますねー」


吉川 「嬉しいやつ? それ本当に嬉しい方のやつ?」


藤村 「こちらの物販コーナーではさまざまなイベントグッズが販売されており、在庫量によって末端価格が変わるそうなのでお早めにご購入ください」


吉川 「末端価格が。一体何を売ってるんでしょうかね」


藤村 「なにせ一年に一度のお祭ということで、色々なジャンルの崇拝者が集結してるみたいです」


吉川 「ハロウィンってそういうものだったっけ? なんか間違って広まってない?」


藤村 「中国の春節を祝う爆竹のような音も色々なところから聞こえてきますね。ほら、ちょうどあちらでは。あ、あれは自動車が燃えてるのかな?」


吉川 「暴動だよ、それは。爆竹も本当に爆竹? 銃声じゃないの?」


藤村 「あ、また死体のコスプレ。多いですねー」


吉川 「もう違うやつでしょ。そんなみんな死体やらなくない?」


藤村 「では参加者の方にお話をうかがってみましょう。こんばんはー」


吉川 「……藤村さん? どうしました?」


藤村 「すみません。映像が少し乱れてしまいました。どうも顔出しNGの方だったようで、カメラマンが黒い影に連れ去られて行ってしまいました」


吉川 「なんだよ、その状況。事件じゃない?」


藤村 「予備のカメラマンがいるので大丈夫です」


吉川 「大丈夫ではないよ。それは」


藤村 「あ、ダメですね。ついてきます。なんとか全力で逃げたいと思います」


吉川 「なにから? どういう状況? 割と平静に実況してるのが逆に怖いよ」


藤村 「多分、大きな鎌を持ってるので死神ですね。とりあえずスタジオにお返ししまーす」


吉川 「……え~、というわけで中継の藤村さんでした。ハロウィンで盛り上がってるようですが、え? 誰あなた? なにその鎌!? えぇっ!?」



暗転

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