分別

吉川 「えっと……」


藤村 「ゴミ出し?」


吉川 「あ、はい。引っ越してきたばかりで」


藤村 「ここら辺はちょっと厳しいからね。結構うるさく言ってくるおばさんもいるんで」


吉川 「そうなんですか。あの、燃えないゴミとかは?」


藤村 「あー。この辺ね、違うんだよ。多分前にいたところとは分別が」


吉川 「そうなんですか?」


藤村 「最初は戸惑ったけどね、慣れれば逆にわかりやすいから。基本的に湿るゴミと湿らないゴミに分けられてて」


吉川 「湿る?」


藤村 「グチョって湿るゴミが、湿るゴミ。湿らないやつが湿らないゴミ」


吉川 「湿るってなんですか?」


藤村 「だから水かけた時よ。紙とか生ゴミとか」


吉川 「じゃ、燃えるゴミが湿るゴミってことですか?」


藤村 「そうだね。だいたい燃えるものは湿るから。逆にプラスチックとかガラス、金属は湿らないでしょ」


吉川 「湿りませんね」


藤村 「湿らないゴミはこっちね」


吉川 「だったら燃えるゴミでいいんじゃないですか?」


藤村 「うちの自治体は燃やさないんだって。なんか食べて溶解液で溶かすクリーチャーがいるらしいから」


吉川 「そんなファンタジックな自治体なんですか?」


藤村 「ほら、あれだから。SDGsだから」


吉川 「それSDGsって言うんですか? 思ってたのと違うんですが」


藤村 「あとはビンカンなゴミはこっち」


吉川 「ビン・カン類」


藤村 「いや、敏感なやつ。空き缶とか端っこが尖ってて触ると切れちゃうようなクリーチャーにとって敏感なやつ」


吉川 「ビン・カン類じゃなくて?」


藤村 「主にビン・カン類のことだけどね。うちはほら、分別がそうなってるから」


吉川 「呼び方だけ違う感じですかね?」


藤村 「わからなくなったらクリーチャー思い浮かべてくれれば大体合ってるから」


吉川 「そのクリーチャー見たことないんですけど」


藤村 「なんか気持ち悪いやつだよ。今頭に思い浮かべた気持ち悪いやつを1.5倍くらい気持ち悪くした感じ」


吉川 「想像のヒントがなさすぎる」


藤村 「あと大きいごみなんだけど」


吉川 「粗大ごみですね」


藤村 「厳密にどの程度からが大きいかって話ではあるんだけど、だいたい象を思い出してもらって」


吉川 「象? 動物の? あの大きさ?」


藤村 「いや、あの象の耳あるじゃない? あの大きさ以上が大きいゴミ」


吉川 「象の耳。ちゃんと想像するのが難しい」


藤村 「でもアフリカゾウの耳だよ? アジアゾウは耳小さいから。マジでビビるくらい小さいから。三角だし」


吉川 「象の耳そんなに知らないですよ」


藤村 「人間以外の生物見たいことない?」


吉川 「それはありますけど、溶解液出すモンスターとか各種の象とか、そんなに知らないじゃないですか」


藤村 「この辺りで暮らしてれば結構見かけるようになりますよ」


吉川 「そんな場所なんですか?」


藤村 「あとリサイクル品ですね」


吉川 「あ、ペットボトルとか?」


藤村 「いえ、脳死の遺体で内臓に傷がついてないやつとかなんですが」


吉川 「その説明もう結構です。引っ越します」



暗転

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