爪娘

藤村 「女の子に擬人化する文化、良いよな」


吉川 「ゲームやアニメのやつ?」


藤村 「そう。結局一番女の子がいいんだよ。世の中におじさんなんていらない」


吉川 「おじさんのお前がそういうんだから、そうなんだろうな」


藤村 「だから擬人化して考えてみたんだよ。俺の爪を」


吉川 「何を言ってるのかよくわからない」


藤村 「まずクラスごとに分かれるよね。エリートクラスの右手、これは個人の能力を伸ばすスキルが使える」


吉川 「話をズンズン進めているところ悪いけど、共有すべき前提が行方不明なままなんだが?」


藤村 「聞いてればわかるだろ。そして準エリートの左手クラス、これは右手にややコンプレックスを抱いている。相手の能力を下げるデバフ系のスキルを使う」


吉川 「爪が」


藤村 「爪娘ね。見た目はもう完全に女の子だから。中指はだいたい長身クール系」


吉川 「わかりやすいけど、あんまりわかりたくないな」


藤村 「右足クラスは縁の下の力持ち。サポート系のバフスキルを使う」


吉川 「足の中指も長身クール系なの?」


藤村 「お前、いきなりいいところつくな。それは追って話すけど、右足中指は長身の親の期待を一身に背負ってるが自身の身長が低いことを悩んでるんだよ」


吉川 「親までいるんだ。爪娘は」


藤村 「そりゃ親くらいいるよなんだって。お前にだっているんだから」


吉川 「俺は擬人化された娘じゃない」


藤村 「左足はトリックスターというか、独立心が強く身勝手な娘が多い。固有のエキセントリックなスキルを使う」


吉川 「それは結局なんなの? ゲームなの?」


藤村 「この間、クラス対抗の勝負があったんだけど、なんと大方の予想を覆して左手クラスが優勝したんだよね」


吉川 「あ、もう話始まってるの? なにもわからないまま」


藤村 「実は後からわかった話だけど、右手薬指の爪娘が左手中指の爪娘の甘言によって裏切ったのが原因だったんだ」


吉川 「急にドロドロしてきたな。可愛い女の子たちがキャッキャする話じゃないのか」


藤村 「右手薬指の爪娘は右手人差し指の爪娘に嫉妬してる部分があったから。結構右手人差し指の爪娘って能力は高いけど人の心に無神経な所あるじゃない?」


吉川 「あるな。知らないけど、右手人差し指の爪娘はそういうところありそう」


藤村 「ただそれがきっかけで右手クラスと左手クラスが瓦解して新しいクラスを作ろう動きが出てきたんだ」


吉川 「どういうこと? 爪娘ってことで理解してるから良いけど、手の爪でしょ? 右と左は入れ替わらないんじゃない?」


藤村 「そこで急激に力をつけたのは、なんと右足の親指の爪娘だった」


吉川 「あいつ、カリスマ性あるもんなー! 実力はピカイチだし」


藤村 「そうなんだよ。自分の能力は高いけど、それを自分だけではなく同じクラスの爪娘たちのために尽くしているという辺りが非常にママ味を感じて根強いファンが多い」


吉川 「ファンがいるの? お前の足の爪に?」


藤村 「爪娘群雄割拠の時代が幕を開けるんだよ。そして一転して嫌われ者になってしまった右手人差し指の爪娘に寄り添う一人の爪娘」


吉川 「誰? 一体その優しい子は誰なの?」


藤村 「……左足の小指の爪娘」


吉川 「あの子かー! 一番弱い子じゃん。まさかその子が!」


藤村 「右手人差し指の爪娘の心はゆっくりと融解していく。でもそこに落とし穴があった。左手中指の爪娘が連れてきたのはなんと!?」


吉川 「誰なんだ。どうなっちゃうんだ?」


藤村 「吉川の右手の中指の爪娘だよ」


吉川 「俺のー! 俺の娘がついに! いや、なんてことしてくれてるんだよ。せっかく治安が戻ってきたのに。俺の爪娘ときたら」


藤村 「さすがに俺も驚いたよ。どうだ、爪娘。いいだろ?」


吉川 「いいな。ストーリーが良いな。キャラも立ってる。もうお前の爪から目が離せない」


藤村 「だろ? でもそんな爪娘たちの世界も業火に焼き払われてしまうのです」


吉川 「なんでそんなヒドいことするんだよ! もっと幸せにケーキとか食べてればいいのに」


藤村 「ちょっとお金がなくて、爪に火をともす生活なんで」


吉川 「わかった! 俺が課金する!」



暗転

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