褒め

藤村 「いらっしゃいませ~。褒めバイキング。2時間褒められ放題です」


吉川 「褒めバイキング? 初めて聞く言葉なんだけど」


藤村 「おや? 知りません? あの褒めバイキングですけど」


吉川 「ちょっと聞いたことないです」


藤村 「でしょうね。さっき始めたんで」


吉川 「じゃ、なんで『あの』ってつけたんだよ。誰も知らないなら『あの』が成立しないだろ」


藤村 「いや、さすが鋭い! 普通の人なら見逃すところを的確についてくる」


吉川 「なにこれ、もう褒め始まってるの?」


藤村 「はい。始まってます。でなければお前みたいなやつ褒めたりしませんよ」


吉川 「落差でかいな! 褒めてない時の常態は貶しなのかよ」


藤村 「さあどうぞ。色々な褒めがありますが好きなのを選んでもらって心が一杯になるまで褒められてください」


吉川 「お腹いっぱいじゃないんだ。この海外の反応っていうのは?」


藤村 「各国から様々な人が褒めてくれます」


吉川 「じゃ、それをとりあえず」


藤村 「さすが吉川、世界一礼儀正しい国の人ね(アルゼンチン)。俺は驚かないぜ、だって吉川だからな(ブラジル)。彼を見ると我が国の政治家を恥じるよ(ベネズエラ)」


吉川 「嬉しいっちゃ嬉しいけど、俺をピンポイントで褒めてます? なんか日本人を褒めてるのをまとめたサイトで見たことある気が」


藤村 「おいおい吉川がまたやってくれたぜ(チリ)。頼む、我が国を植民地にしてくれ(パラグアイ)」


吉川 「植民地ってなんだよ。支配者じゃないんだから。あと南米に偏ってるな」


藤村 「だいたいこんな感じです」


吉川 「具体性がなく褒められるのって逆に気持ち悪いもんだね。この女王様風っていうのは?」


藤村 「お、いきますか? 過激なやつになりますけど」


吉川 「ちょっと興味はありますね。いわゆるアレでしょ?」


藤村 「……ふんっ!」


吉川 「え? 終わり?」


藤村 「メチャメチャ褒められてましたね。お前にはもったいない褒めですよ」


吉川 「あ、そうなの? もっと色々聞いたことないボキャブラリーが飛び出すかと思ってたんだけど。あと平熱の時の貶しがやや気になるな。女王様風でもないし」


藤村 「最近の女王様の最大級の褒めだとこうです。気に入りませんか?」


吉川 「あー、逆に本格的すぎるんだ。もっとカジュアルなやつかと思ってた。じゃ、このチアガール風ってのは?」


藤村 「あー、チアガールは昨日ちょっと足グネッってやっちゃったからできればやりたくないです」


吉川 「無理したんだ。気の毒だな、お大事に」


藤村 「まだいります? こんだけ褒めたのに」


吉川 「そっちが限界聞いてくるの? あんまりまだ気持ちいい褒めが出てないんだけど」


藤村 「さすが! 褒められても褒められても満たされない褒め界のギャル曽根!」


吉川 「だんだん褒め方が雑になってない?」


藤村 「もう十分じゃないですか? あなたの今までの人生の総褒められ量を上回ってるでしょ」


吉川 「総だったらもうちょっと褒められてるよ!」


藤村 「そんなわけないでしょ。こんなところ来るようなやつが褒められたことなんてあります?」


吉川 「お前、自分のアイデンティティを犠牲にしてまでよく貶せるな」


藤村 「まったくお前ってやつはさぁ。でも、そんなお前が……」


吉川 「あ、ひょっとしてこれは。ギャップ褒めの布石だったのか?」


藤村 「チップを受け取らないなんて先進国だな(ペルー)」


吉川 「また海外の人!」



暗転

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