コラボ

吉川 「なんか珍しい服着てるね」


藤村 「あぁ、これ? コラボのやつ」


吉川 「へぇ~、そんなの着るんだ。何のコラボなの?」


藤村 「見てわからない?」


吉川 「わからないから聞いてるんだよ。この1ターン無駄な会話だな」


藤村 「わからないか。服だよ」


吉川 「だから何の服? それを聞いてるんだよ」


藤村 「なんのかは知らないけど」


吉川 「お前がコラボって言ったんだろ? なに、この噛み合わない会話」


藤村 「コラボだよ。俺と服の」


吉川 「んあ?」


藤村 「俺と服のコラボ」


吉川 「意味がわからない。何を言い出したの?」


藤村 「だから、俺と服のコラボ」


吉川 「さっきから同じことしか言ってないな。なんだそのコラボの概念。一個もわからん」


藤村 「俺はわかる? 俺っていうのは藤村こと俺のことで」


吉川 「お前はわかるよ。それはわかってるよ。あと服っていう概念もわかってるよ。ただコラボの概念がわからない」


藤村 「コラボってのは、誤解しないで欲しいんだけど、これは性的な意味じゃなくてね、合体するっていうか」


吉川 「性的な意味だと思わないよ、最初から。釣りバカ日誌か」


藤村 「だから俺が服とコラボしたの」


吉川 「それを普通は服を着たっていうんだよ」


藤村 「まぁ、そうとも言うけどコラボとも言う」


吉川 「言わないよ! 初めて聞いたよ、そのコラボの使い方」


藤村 「そう? じゃあ聞くけど、俺とお前がこうして今やってることをなんていう?」


吉川 「これはコラボとは言わないだろ。言うの?」


藤村 「いや、言わない。これは雑談っていう」


吉川 「なんなんだよ。これもコラボですっていう流れじゃないのかよ。たしかにこれはコラボじゃないよ。そんなの俺だって最初からわかってたよ」


藤村 「でも俺だってお前だって父親と母親のコラボの産物なわけじゃない?」


吉川 「それをコラボっていうのか? ものすごく広義にとらえればコラボと言ってもいいかもしれないけど」


藤村 「性的な意味じゃなくてね」


吉川 「その注釈いらないよ。生々しいし気持ち悪い」


藤村 「立ち話もなんだからどこかお店でもコラボらない?」


吉川 「お店と? そのさ、コラボってのは一方的にするもんじゃないんじゃない? 向こうもそれを受け入れる感じがないとコラボじゃないじゃん」


藤村 「お店も俺のこと受け入れると思うけど?」


吉川 「客としてな! コラボ相手として受け入れてるわけじゃないと思うよ。お店の人がコラボしてる自覚ないならそれはコラボじゃないよ」


藤村 「お前コラボに厳しいな」


吉川 「別にコラボに厳しいわけじゃないよ。そんなもの取り締まってるつもりない。ただおかしいから」


藤村 「だったら他になんて言えばいいんだよ。お前の父親と母親に何をしたのかどう問い詰めるんだよ」


吉川 「問い詰めないよ、そんなこと。持ち出すなよ、両親を。だいたいうちの両親はコラボしたと思ってないもん」


藤村 「してるくせに。コラボしまくってるくせに」


吉川 「やめろよ! マジでふざけんなよ! 二度とコラボって言うな!」


藤村 「あ、このカフェでいいじゃん。営んでるかな?」


吉川 「営みっていうのもやめろよ。余計やめろよ!」



暗転

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