吉川 「ハァ~。こちらが!」


藤村 「さようです。怨霊を鎮めております」


吉川 「こんなところに曰くの場所があるだなんて知りませんでした」


藤村 「こちらに由緒が書かれておりますが、大昔この世に恨みを残したグラビアアイドルがおりまして。周りのものはその祟を恐れていたそうです」


吉川 「グラビアアイドル?」


藤村 「はい。そして平将門の怨霊を鎮めるために首を祀った首塚をたてたように、そのグラビアアイドルが入れていたシリコンを祀っております」


吉川 「シリコンを?」


藤村 「はい。シリコン塚ですね」


吉川 「え? それっていつの話ですか?」


藤村 「さぁ、なにぶん古い話なので。伝承として残っているだけで詳しい時代などは定かでないそうです」


吉川 「グラビアアイドルってそんな昔からあります?」


藤村 「もちろん。古くは古事記のアメノウズメなども記されておりますし」


吉川 「グラビアアイドルだったの? グラビアって概念あった? 印刷技術ない時代に」


藤村 「缶切りの発明は缶詰が発明されてから50年以上後ですよ」


吉川 「その頓知みたいな返しで納得できる気がしないんですが」


藤村 「縄文期の貝塚からはビキニらしきものも発掘されております」


吉川 「それビキニじゃなくてただの貝殻でしょ。ホタテ貝の」


藤村 「ホタテ貝をビキニ以外に使うことってあるんですか?」


吉川 「あるだろ。ビキニ専用の貝だと思ってたの? だいたいあれは食べた後の殻だから」


藤村 「グラビアアイドルがいないとしたら、人類が現代に至るまでに一度も女性をエロい目で見たことがない言うことになりますが?」


吉川 「それはさぁ、あるだろうけど。そっか。それに類する仕事ってのもなくはないのか。でも百歩譲ってグラビアアイドルがいたとして、シリコンってなに?」


藤村 「知りません? あの柔らかめの様々な用途に使われてる」


吉川 「知ってますよ。最近の技術だってことを」


藤村 「それは偏見じゃないですか? 歴史を紐解くのに偏見は一番いけないことです」


吉川 「いや、ないだろ。大昔に。それを偏見っていうか?」


藤村 「一見未来のテクノロジーで作られたようなオーパーツというのもありますから」


吉川 「シリコンをどこに入れてたんだよ。そのグラビアアイドルは!」


藤村 「あなた、そういう姿勢はいけませんよ。他人のコンプレックスに対して土足で踏み込むようなことをしてはいけない」


吉川 「なんで急に人権派みたいな思考ができるんだ。シリコン塚を祀ってるくせに」


藤村 「たとえどこにシリコンが入ってようが、そんなことにこだわるのは怨霊に失礼です。将門の首がどこについてたか調べようとしましたか?」


吉川 「首はだって首だもん」


藤村 「乳首かも知れない」


吉川 「乳首かも知れなくはないだろ。乳首がポロンって落ちてて『お、これを祀って祟を鎮めよう』って発想するやつおかしいよ」


藤村 「ポロンだなんて、勝手に小豆サイズみたいに決めつけるのやめてください。もっと荒ぶる大きさだったかもしれないじゃないですか!」


吉川 「何言ってるんだよ? そんなもんのサイズ感なんて誰も気にしねぇよ!」


藤村 「……はっ!? 急にここら一帯が清涼な空気に変わった!」


吉川 「確かに」


藤村 「どうやらあなたのサイズを気にしない発言に、長年の恨みが晴れたようですな」


吉川 「だとしたらわざわざ祀ってたやつらが悪いんじゃ?」



暗転

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