魔法学校

藤村 「諸君らは魔法の初心者であるから、この学校で基礎からしっかりと学んでいただきたい」


吉川 「わかりました」


藤村 「生徒たちの魔法のレベルはそれぞれ。それこそ全く魔法など知らないというものから、複雑な詠唱を一息で言い切るほどの者もいる。しかしここでは皆仲間だと思って力を合わせて卒業してもらいたい」


吉川 「はい」


藤村 「ではまず基本的なことから。魔法は四つの元素に基いて体系づけられている。それぞれはお互いに補完し合ったり反発しあったりする。吉川くんわかるかね?


吉川 「はい。火、水、風、土です」


藤村 「ん? 全然違うぞ。なにそれ?」


吉川 「あれ? 違います? ボクが元いた世界のいわゆるファンタジーの世界ではそういう風になってるって思ったんですが」


藤村 「急に変なこと言うからびっくりした。ちゃんと覚えてください。魔法の四元素は醤油、塩、味噌、豚骨です」


吉川 「え? それってラー……」


藤村 「その言葉は決して言ってはならない!」


吉川 「言ってはならないの? この世界ではすごいことなの?」


藤村 「どこで知った? どこでその言葉を知ったんだ!」


吉川 「あ、いや。なんかそういうのだと思わなくて。元の世界では一般的だったから」


藤村 「元の世界。不思議なことを言うやつだ。要注意人物リストに入れておこう」


吉川 「えー、だってこっちにしてみれば日常だったもの。野菜マシマシとか言ってたもの」


藤村 「ひぃっ! なぜそんな複雑な詠唱を!? お前は一体何者だ!」」


吉川 「詠唱ってこれなの? これで魔法のなにを表現するんだよ。野菜が多くなるだけだろ」


藤村 「緊急事態だ。魔法省の総出を挙げてお前を倒さねばならぬ」


吉川 「なんでよ。悪いこと何もしてないよ。どっちかというと野菜増してるのはいいことじゃない。邪悪なのは油多めでしょうが」


藤村 「お、お前は! この世界を破滅させに来たのか!」


吉川 「え、じゃあなに? ボクは魔法使えてるわけ? この世界で。すごいやつを」


藤村 「ワシにはそんなもの無理だ! もうそれ以上何も言わないでくれ。頼む」


吉川 「そんなこと言われても。普通に注文してるような言葉なのに」


藤村 「こうなったらワシの最強の魔法を持って答えるしかない。喰らえ! ギョウザハンガク!」


吉川 「餃子半額。弱い。弱いよ、効果が! 全然魅力ないよ。せめて無料にしろ。なに半額程度でやった気になってるんだ」


藤村 「これすらも効かないとは。こうなったら禁呪を使うしかない。たとえワシの命が尽き果てても。喰らえ! ザーサイタベホウダイ!」


吉川 「ザーサイで? 命尽き果てるの? ザーサイにそこまでかける価値ある? ザーサイを食べ放題したいと思ったこと一度もないんだよ」


藤村 「やはり効かなかったか。ワシはここまでだ。あとは他のものに託すしかない」


吉川 「他のものが来るのか?」


藤村 「勝ち誇るのもそこまでだ。次のシフトのものはワシなんかとは違う。熟練のバイトだ」


吉川 「シフト制なのかよ。注文されて困ってただけじゃねえか」


藤村 「ワシ、今日が初日なんで」


吉川 「そんなやつがワンオペするんじゃないよ。なんだよ、この店」


藤村 「魔法学校コンカフェラーメン屋です」


吉川 「もうちょっと情報絞ったほうがいいぞ?」



暗転

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