目覚め

吉川 「ここは……?」


藤村 「目が覚めたようですね。ずいぶん長い間眠られてたんですよ」


吉川 「こ、ここはどこですか?」


藤村 「さて、ここで問題です。ここは一体どこでしょうか!」


吉川 「え? 何、急にそのノリ。今起き抜けで全然そんな感じじゃないんだけど」


藤村 「チッチッチッチ……」


吉川 「タイムを刻むなよ。なんだよ。何が起こってるんだよ。目覚めてノータイムでクイズって健康に一番悪いよ」


藤村 「ブブー! 時間切れです。残念でした吉川さん。ではお眠りください」


吉川 「なんでだよ。なんで起きちゃダメなの? 状況が一個もわからない。起きてノー情報で直クイズの世界観が理解できない」


藤村 「でも不正解だったので」


吉川 「不正解だったら眠らなきゃならないの? それで今まで眠ってたってこと?」


藤村 「私の口からはなんとも」


吉川 「お前の口からなんとか言ってもらうしかないだろ。他にいないんだから。なんで口ごもってるんだよ」


藤村 「時空法により守秘義務がありますので言えないんです」


吉川 「時空法? 聞いたことない! ひょっとしてとんでもない未来に来てしまったのか?」


藤村 「眠り続けてお腹が空いているはずです。最中食べます?」


吉川 「モナカ! モナカあるってことは未来じゃないな! 未来にモナカないだろ。あの素朴さが生き残れるとは思えない」


藤村 「でもカルマン星系の最新技術で寝ている間も肉体的にはほぼ消耗はありませんから」


吉川 「カルマン星系! それも聞いたことないよ。異星人と交流があるの? ここはひょっとして宇宙のどこかで」


藤村 「あ、みすず飴もあった。食べます?」


吉川 「長野だわ。みすず飴あったら長野のほど近くだよ。あのグミみたいな。それでいてグミのポップさを拒絶したような。ニチャってなるやつ。宇宙に絶対進出しない食べ物だもの」


藤村 「ロボティック・シンクロ・モニターによればバイタルは非常に安定してます」


吉川 「ロボ……なんとか! よくわからない語感! ひょっとして眠っている間にコンピュータが発展し人類はロボットに支配されるような、そんなメカニカルな時代になってるのか!」


藤村 「あ、ポン菓子もありましたよ。これ軽くて食べやすいから」


吉川 「なってないわ、ポン菓子だもん。お米を蒸気で圧縮してドカンってやるやつ! 音がただただデカい装置の! ロボット世界で一番つくられないお菓子。もうちょっとメカにも進歩のしようがあるだろっていう、あのポン菓子! ここは現代! 俺の知ってる時代に違いない。どこなんだ、ここはっ!?」


藤村 「かりん糖もありましたよ」


吉川 「なんで地味目のお菓子ばかりお見舞いできてるんだ。どうして俺はこんな病院で寝ていたんだ!」


藤村 「あ、これかりん糖じゃなくてウンコだ」


吉川 「病院ですらねぇっ!」



暗転

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