レッスン

藤村 「我が流派は日本の伝統、そして歴史を背負ったものであると心してください」


吉川 「はいっ!」


藤村 「技術を磨くのではなく、魂を磨く。そなたの奥に眠った大和魂を目覚めさせるのです」


吉川 「わかりました」


藤村 「ではレッスンに移ります。ワン・ツー・スリー・フォー」


吉川 「え、レッスン?」


藤村 「はい、リズムを感じてー」


吉川 「リズムで?」


藤村 「……スリー・フォー!」


吉川 「大和的な雰囲気で進めるわけではないのですね?」


藤村 「大切なのは魂です。言葉などは形に過ぎません。それにとらわれずに和の心を大切にしてください」


吉川 「わかりました」


藤村 「では次はインナーマッスルに集中して!」


吉川 「インナーマッスルに!? いや、大事なのは魂ですからね」


藤村 「そう。ソウルを感じてー!」


吉川 「ソ、ソ、ソウル!? もう魂って言うことすら放棄した?」


藤村 「はい、ここでキープ! カロリーを燃焼させましょう」


吉川 「我が流派って言ってたのに。カロリー燃焼させる人が『我が』っていう一人称使う?」


藤村 「アップ・ダウン・アップ・ダウン」


吉川 「もう全然日本語使わなくなってきたな」


藤村 「はい。感じてー!」


吉川 「歴史と伝統を感じるんですね」


藤村 「オーラを感じてー!」


吉川 「オーラ? もうなんかスピリチュアルなこと言い出したな」


藤村 「はい、想像する! モテボディに変わった自分を想像する!」


吉川 「モテボディになろうと思って流派の門を叩いてないもん。そこの想像は難しいよ」


藤村 「諦めないよー。ワン・ツー! 最後まで振り絞ってー」


吉川 「魂を?」


藤村 「カロリーを!」


吉川 「もう魂よりカロリーの方が大事になっちゃってるじゃん。最初の口上はなんだったんだよ」


藤村 「ラストですー。全力でー! はい、フィニッシュ!」


吉川 「最後まで徹底して日本っぽくない感じで終わったな」


藤村 「お疲れ様でした。免許皆伝です」


吉川 「皆伝早い! 一回のプログラムで皆伝もらえるの?」


藤村 「しかしまだ真髄にたどり着いたとは言い難い」


吉川 「そりゃそうでしょ。一個も言えないよ」


藤村 「我が兄弟弟子の道場に学びに行くのだ」


吉川 「そうやってたらい回しにされるシステムなのか」


藤村 「兄弟弟子は美ボディ・アロマ・ヨガの道場をしておる」


吉川 「美しくなっちゃうなぁ!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る