藤村 「吉川さん、いつもお若い!」


吉川 「そうでもないよ」


藤村 「しかもお元気でいらっしゃる」


吉川 「あぁ、うん。まぁ元気だけど。人のことジジイだと思ってる?」


藤村 「そんなことないですよ。雰囲気もお明るくて」


吉川 「その『お』がなんかナメてる感じするな。別に目上の人でもないのにわざわざ『お』をつけられると皮肉っぽく聞こえる」


藤村 「そういうものか。気をつけないとな。おありがとう」


吉川 「すごいバカにされてる感があるな。わざとやってるだろ」


藤村 「そんなお卑屈にならないで」


吉川 「卑屈におがついたの初めて聞いたな。あんまりネガティブな言葉にはつけないんじゃない?」


藤村 「お汚い言い方はおやめなさい」


吉川 「あ、ネガティブでもあるのか。そんなにちゃんとわかってるなら『お』に執着しなくてもよくない?」


藤村 「おごめんなさい」


吉川 「ごめんは『御免』でもうすでに『御』がついてるんだから『お』をつけちゃダメだろ」


藤村 「御御御付おみおつけ」


吉川 「ああ言えばこう言うな。返し技の達人ジェシー・メイビアみたいだ」


藤村 「お押忍!」


吉川 「もうなんだよそれ。そもそも押忍自体があんまりわからないんだよ。押忍に明確な意味ないだろ」


藤村 「丁寧な言葉づかいをすると人格が1レベル上がったような気がするな」


吉川 「それは俺を見下すことによって上がった感出してない?」


藤村 「そんなことおないです」


吉川 「おないです?」


藤村 「同い年」


吉川 「それは関係ないだろ。韻を踏んだからOKじゃないんだから。勝手にルール変更するなよ」


藤村 「おうるさいことをお言いにおならないでお下さい」


吉川 「ムカつくなぁ。『お』がつくだけで1.5倍ムカつくなぁ」


藤村 「おムカですか?」


吉川 「ちょっと幼児語みたいに変化させるなよ。女子高生か」


藤村 「おJKっぽくおなってます?」


吉川 「おなってますはやめろ。特にJKと一緒の文章に入っちゃダメだから。特別な意図はないとしてもダメ。絶対に」


藤村 「お大岡山の方のおJKに?」


吉川 「もう言いたいだけじゃん。お大岡山はもうフォーカードだから言いたい気持ちはわかる」


藤村 「そんなことないお?」


吉川 「語尾に!? 急にどうした。キャラクターにもあってない」


藤村 「おおかしい。お自分でお言葉がお制御おできおない」


吉川 「レジスタンスにウィルス入れられてバグったマザーコンピュータみたいになってる」


藤村 「おお前のおせいだ!」


吉川 「『お』に乗っ取られてる人間はじめてみた」


藤村 「お吉川! およし!」


吉川 「今、名前に釣られただろ」



暗転

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