正気

藤村 「もし俺が正気を失ったら、お前が殺してくれ!」


吉川 「……しかたない。わかった!」


藤村 「あとHDDの『資料(過去)』というフォルダを中を見ないで消去してくれ!」


吉川 「……わかった。薄々理由はわかるけどあえて聞かないでおこう」


藤村 「でもその中の『巨(特選)』のフォルダだけは、もし蘇ったりした時のことを考えると取っておいて欲しい」


吉川 「案の定だな。消すよ。蘇らないようにとどめを刺すから」


藤村 「あと『メガネ(老眼含)』のフォルダも捨てがたいから、クラウドに保存しておいてくれないか」


吉川 「老眼も含んでるの? 思ったより幅広いな」


藤村 「それと『チョコまみれ(全身)』のフォルダも」


吉川 「フォルダを独自に作るほどジャンルを形成してるの、それ? ある? いっぱい」


藤村 「貴重なシーンを寄り集めたものになってるから」


吉川 「ディスカバリー・チャンネルみたいな言い方をするなよ。全身チョコまみれを」


藤村 「それと『相撲』のフォルダの中の『素人』の中にある『取り組み後』のフォルダも今となっては手に入らない物が多いので」


吉川 「それ本当に相撲のフォルダなの? 素人の相撲を集めてるやついる? もう絶対文字通りじゃない気がするんだけど」


藤村 「『素人(裏)』の中のフォルダの『インタビュー』も大切なので」


吉川 「なんだよ、『素人(裏)』って。どんな相撲? 地下格闘技場で殺し合いとかしてるの?」


藤村 「正規ルートでは手に入らない映像だから……」


吉川 「だいたいなんだよ、取り組み後とかインタビューとか。相撲のジャンルをそれほど細かく分類してる人いないんじゃない? 相撲じゃないだろ」


藤村 「正確にはプライベート、土俵入り、取り組み前、取り組み、取り組み後、インタビューのフォルダに分かれてるけど」


吉川 「ギリギリ相撲に寄せたフォルダ名にしやがって。なんだよ、土俵入りって。どの場面を土俵入りって定義してるんだよ」


藤村 「す、相撲だから……」


吉川 「押し切る気か。まぁいいよ。武士の情けだ、深く追求しないでやるよ」


藤村 「あと『サイバーパンク・くノ一』のフォルダの中の『VS カウガール巫女』というフォルダがあるんだけど、その中の『ビチョビチョTシャツフェスvol.6』のフォルダの中にある……」


吉川 「多い! 情報量が多すぎる! 大本の『サイバーパンク・くノ一』のジャンルが懐深すぎるだろ。なに『ビチョビチョTシャツフェス』を6回も開催してんだよ!」


藤村 「開催自体は7回で今度コロナ後ようやく再開される8回目があって」


吉川 「根強いファンがいるな! カウガール巫女も! 何をどう融合してカウガール巫女が生まれたんだよ」


藤村 「カウガール巫女誕生の秘話は『ビキニ・キョンシー』のフォルダの中にある『スピンオフ(モザ有)』の中に詳しいやつがあって」


吉川 「いいよ別に。本気で興味あるわけじゃないんだよ。存在に驚いてるだけで。特殊過ぎるジャンルが集まっててもう理解不能なんだよ」


藤村 「でもこれはまだフォルダの一階層目の話で、ここからが大事なんだけど」


吉川 「もう正気を失ってるってことでいいか?」



暗転

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