藤村 「最近、不眠症になっちゃって」


吉川 「大変だな。ヒツジでも数えてみたら?」


藤村 「あー。意外とそれやったことないな。試してみるか」


吉川 「効果があるのかわからないけどね」


藤村 「今ここでやるから寝てる間に襲われないように見張ってて」


吉川 「ここで!? そんなすぐに寝れないと思うけど?」


藤村 「ヒツジが一匹、フツジが一匹、ミツジが一匹、ヨツジが一匹……」


吉川 「待って!? そっちが増えるの?」


藤村 「ゴツジが一匹、ムツジが一匹……」


吉川 「ヒツジのヒってひとつのヒだと思ってたの?」


藤村 「ヤツジが一匹、クツジが一匹、トツジが一匹……」


吉川 「ここから一体どう展開するのか。大和言葉で数えると11になると辛いぞ」


藤村 「グゥ……」


吉川 「寝るなよっ!」


藤村 「え? なに? どうした!?」


吉川 「いや、次は? トツジの次は!?」


藤村 「なに言ってんの? せっかく寝付けたのに」


吉川 「あ、ごめん。そうだった。展開が思ってたのと違いすぎて趣旨を忘れてしまった」


藤村 「久しぶりのいい寝付きだったのに。やっぱ効果絶大だわ。ヒツジを数えるの」


吉川 「ヒツジを数えてた? 本当に?」


藤村 「数えてたよ。他に何を数えるんだ?」


吉川 「だってなんか違うのが来てなかった? 知らない生物が」


藤村 「知らないやつは来てないよ。だいたいお馴染みの。あのモコモコとしたかわいいやつ。ナツジとか」


吉川 「誰? なにそのナツジは。どんな生き物?」


藤村 「ナツジだよ。七番目の」


吉川 「皆さんご存知の、みたいな感じで言ってるけど。ナツジに会ったことないよ。生まれてから一度も」


藤村 「北半球にはいないんだっけ?」


吉川 「逆に南半球にはいるの? ナツジが」


藤村 「あれ? どうだったっけな。野生ではもういないんだっけ? 俺も詳しく知ってるわけじゃないから」


吉川 「詳しい詳しくないの概念があるほど世に知られてるもの? ムツジとどう違うの?」


藤村 「いや、ムツジとナツジは全然違うでしょ。そこを間違える人はいないよ。ムツジとヤツジなら混乱するかもしれないけど」


吉川 「結構明確なビジョンがあるんだ!? そんな知らない生き物に」


藤村 「でも性格が違うからさ。ヤツジは比較的おとなしいけどムツジは共喰いするし周囲に毒を撒くから」


吉川 「急に物騒な話になってきた。え、なに? モンスターなの?」


藤村 「まだましだよ。ヨツジは精神攻撃してくるから。気づいたら自分で自分を何度も刺してたりするから気が抜けない。俺もヨツジだけは苦手なんだよね。対策もしてないし」


吉川 「俺はてっきり全体的にヒツジの亜種的なものを思い浮かべてたんだけど、全然そういう仲間たちじゃないんだ?」


藤村 「見た目は可愛いよ。モコモコで」


吉川 「あぁ、見た目はヒツジに寄せてるんだ。そのモンスター群は」


藤村 「でも初心者が最初に手こずるのはトツジだと思うよ? 特殊攻撃でステータス異常にしてくるから」


吉川 「トツジが。最後に来たやつだ」


藤村 「かなり高確率で眠らせてくるんだよね」


吉川 「じゃ、最初からそいつだけ数えろよ」



暗転

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