チュウ

藤村 「この間、野生のポケモンをゲットしたんだけどさ」


吉川 「あー、悪い。割のいい投資の話とポケモンをゲットした話は聞くなっておばあちゃんから強く言い聞かせられてるんだよ」


藤村 「そんなおばあちゃんいないだろ。聞いてくれよ」


吉川 「確かにおばあちゃんもいないけど、ポケモンもいないんだよ。面倒くさい話に巻き込まないでくれ」


藤村 「それがポケモンとしか思えないんだよね」


吉川 「どんなやつなの?」


藤村 「見る? 来い! シャブチュウ!」


吉川 「待って! ダメ。もうダメだそれは。すぐに戻して。公序良俗に反する」


藤村 「なんでだよ」


吉川 「なんでか説明しないとわからない? それポケモンのやつじゃないよ。ウシジマくんとかに出てくるやつだよ。どっちかというとスジモンだよ」


藤村 「でも見てるとなかなか愛嬌があるんだよ?」


吉川 「お前は愛嬌のキャパシティが広いな。その姿を愛嬌と言い張れるの度量が大きすぎるか、視力が機能してないかどっちかだよ」


藤村 「言葉は喋れないけど、こっちの言ってることはわかるみたいだし」


吉川 「ちゃんと言葉を喋れないの末期だよ。本当に早くリリースしなさい。絶対良くないから」


藤村 「せっかくゲットしたのに」


吉川 「それはポケモントレーナーがゲットしちゃだめなやつ! ゲットは行政とかに任せて関わるなよ」


藤村 「進化させたいんだけど」


吉川 「ろくなもんに進化しないよ。罪か死か、どっちかのルートしかないんだから」


藤村 「詳しい人に聞いたらゴクチュウになるらしい」


吉川 「それは確かになっちゃうよ! その詳しい人も問題だよ。何を上手いこと言ってるんだ。そんな状況じゃないだろ」


藤村 「でも強いはずなんだよな。ほら、ポケモンてさトレーナーより強いポケモンはあんまり言うこと聞かなかったりするじゃない? こいつもチョイチョイいうこと聞かないんだよね」


吉川 「強さ関係なくいうこと聞かないタイプだと思うよ。もう世の中のありとあらゆることを聞いてこなかったからこうなっちゃったんだから。注意してくれる人もいたはずなのに」


藤村 「しょうがない。シャブチュウ、戻れ!」


シャブ「……」


藤村 「全然言うことを聞かない。どうしよう」


吉川 「もうどうしようもないんだよ。俺たちには救えない。専門の機関に任せるしかないんだ」


シャブ「あたまイタ……」


藤村 「うわぁ! 喋った! やったー! コミュニケーションが取れたぞ」


吉川 「それをコミュニケーションとは言わないんだよ。言葉を知ってるだけじゃダメなの。もうやめなって。放っておこうよ」


藤村 「いや、俺はこいつと旅に出る!」


吉川 「ろくな旅にならないぞ! なんでこれだけ注意してるのに聞かないんだよ。お前、どうしちゃったんだよ?」


藤村 「俺は昔からこうだぜ? 知らなかったのか?」


吉川 「そんなやつだったか?」


藤村 「自己中!」


吉川 「お前もかよ」



暗転

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