プログラム

藤村 「ハロー・ワールド」


吉川 「こんにちは」


藤村 「プログラム講座の第一回ですね。私が講師の藤村です」


吉川 「よろしくお願いします。吉川です」


藤村 「吉川さん。プログラムの経験は?」


吉川 「まったくありません、初心者です」


藤村 「なるほど。全然大丈夫です。以前にも未経験の初心者がいましたが、その人今何やってるか知ってます?」


吉川 「いえ、知りません」


藤村 「そうですか。もし知ることがあれば教えてください」


吉川 「え? 音信を聞いたんですか? 過去の経歴というか、こんな事できるようになりましたって話じゃなくて?」


藤村 「全然連絡取れなくなっちゃって。北の方に行くとは言ってたんだけどね」


吉川 「普通そういう過去の受講者を例に出さなくないですか? もうちょっと華々しい人を紹介してモチベーションを高めて欲しいなぁ」


藤村 「それでいいますと、三ヶ月くらい前の人かな、今はグーグルで働いてるそうです」


吉川 「え? グーグルで? すごい!」


藤村 「そうです。三ヶ月くらい前に出会い系アプリで会った人ですけど」


吉川 「受講者じゃないの? あなたの影響はまったく及んでないじゃん。会っただけの人じゃん」


藤村 「私の受講者で言うならば……」


吉川 「最初からそこ限定で話してくださいよ。まさかそこ以外の話をされるとは思わなかった」


藤村 「まだ前科がついた人はいませんね」


吉川 「それは当たり前の基準であってくれよ。なんとかクリアした感ださないで」


藤村 「まぁこの講座を滞りなく修めることができれば、恐らく前科はつかないと思います」


吉川 「途中離脱したらつくの? なにかに手を染めるの?」


藤村 「私の経歴を紹介しますと、まずプログラム言語のネイティブです」


吉川 「ネイティブ? それで育ったの?」


藤村 「はい。両親がプログラマーだったもので」


吉川 「だからってプログラム言語で育てるの? 怖いな」


藤村 「しかし考えてみてください。世の中にあるコミュニケーション、相手に伝える、なにかをしてもらう、影響を及ぼす、それはすべてプログラムと言ってもいいわけです」


吉川 「なるほど」


藤村 「では私に続いて復唱してください」


吉川 「ふ、復唱?」


藤村 「イント、バブルソート、カッコ……」


吉川 「ええ!? 言うんですか?」


藤村 「はい。まず形から慣れることが必要なので」


吉川 「口で? なんか意味があるんですか?」


藤村 「まず音読して、それから感想、作者の気持ち、どうすればよかったのか、などを考えます」


吉川 「国語の授業のアプローチでいくの? プログラムは正しく実行されるかどうかじゃないの?」


藤村 「はい。今の発言で私はヘソが曲がってきました。言ってみればあなたのプログラムによって私のヘソ曲げが実行されたわけです」


吉川 「あ、はい。え? どういうこと?」


藤村 「このまま私のヘソが曲がったままでは正しい授業はできません。ヘソが曲がってると嘘を教えることがあるので。そういう条件に分岐しました」


吉川 「身をもってプログラムというシステムを解説してくれてるのですか?」


藤村 「なので、私のヘソ曲げを治すプログラミングをしてください」


吉川 「えー。先生格好いいです。素敵! 教え方が上手い!」


藤村 「治ってきてます。いいですよー」


吉川 「教え方が丁寧。清潔感がある。顔が格好いい」


藤村 「あー、格好いいが重複してしまいましたね。そういうコードを書いてはいけません」


吉川 「ためになるなぁ!」


藤村 「はい。ヘソ治りました。これがプログラミングの基本です」


吉川 「違うと思います」



暗転

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