応援団

吉川 「夏本番だね」


藤村 「いやぁ、いよいよ本番だね。練習してきた甲斐があった」


吉川 「いや、夏本番に向けて練習してる人は君くらいだと思うけど」


藤村 「しかし、夏と言えばあれだね。甲子園」


吉川 「あー、甲子園ね」


藤村 「俺好きなんだよ。応援」


吉川 「そうなんだ」


藤村 「なんてったって、美しいじゃない。高校生の青春」


吉川 「まぁ、美しいと言えば、美しいかな」


藤村 「もう断然応援しちゃうね」


吉川 「そんなに気合が入ってるとは思わなかったよ」


藤村 「アルプスの少女を目指すよ」


吉川 「なんだよそれ」


藤村 「知らないのか? 甲子園のスタンドはその聳え立つ姿からアルプススタンドと呼ばれてるんだ」


吉川 「ほぉ……」


藤村 「そこにいる美しい少女をアルプスの少女と呼ぶのさ」


吉川 「それはわかったけど、君は少女じゃないね」


藤村 「どっちかというと少年か」


吉川 「いや、どっちかといったらおっさんだと思う」


藤村 「じゃ、俺はアルプスのおんじを目指すよ」


吉川 「それはただのハイジのおじいさんじゃ」


藤村 「しかし、応援はいいよ。一致団結して汗をかいて」


吉川 「そんなに好きなのか」


藤村 「ゴボウの次くらいに好き」


吉川 「ゴボウの順位がまるで見えてこない。ゴボウはそんなにランキング高いのか」


藤村 「ゴボウでわかりにくかったら、あれだ。ザーサイ。ザーサイより好き」


吉川 「ザーサイに対して、それほど自分の立場を考えたことはなかったよ」


藤村 「まぁ、俺のラブ度で言うと一、二を争うな」


吉川 「地味なものが好きなんだな」


藤村 「あーもう! こうしちゃいられない。一緒に応援しようぜ」


吉川 「どこかひいきのチームとかあるの?」


藤村 「そりゃ、断然、地元のチームだよ」


吉川 「西東京か」


藤村 「西東京代表には頑張ってもらいたい。是非、甲子園の土になってもらいたい」


吉川 「土になっちゃダメだろ。なんか死んじゃってるみたいじゃんか」


藤村 「骨をうずめたいという意味でね」


吉川 「いや、俺は悪いけど西東京と一緒に心中するつもりはないよ」


藤村 「例えばだよ。よし、俺らで応援団を結成するぞ」


吉川 「団て……」


藤村 「俺たちの一票が明るい未来を作るんだよ」


吉川 「選挙っぽくなってる」


藤村 「とにかく。応援するぞ」


吉川 「わかった。じゃ、応援しよう」


藤村 「かっとばせー!」


吉川 「かっとばせー!」


藤村 「応援団!」


吉川 「え……」


藤村 「フレー! フレー! 応援団!」


吉川 「応援団の応援なの?」


藤村 「俺、好きなんだよ。応援」


吉川 「そ、そう……」



暗転

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