あわてんぼう

サンタ 「え? 今って何月?」


吉川  「えーと……、7月ですけど、なんでですか? タイムトラベラー?」


サンタ 「やっべ! また、あわてちゃったよ」


吉川  「どうしたんですか?」


サンタ 「いや……12月に来る予定だったんだけどね。どおりで暑いと思ったよ。長袖俺だけじゃん」


吉川  「長袖って言うか、なんかふわふわしてますもんね」


サンタ 「こんなことなら、ピチTで来ればよかったよ」


吉川  「いや、ピチT着てる人も最近いないですけどね。ところであなた……」


サンタ 「あ、申し送れました。サンタクロース、通称サンダースです」


吉川  「そんな通称聞いたことない。大佐? 軍人?」


サンタ 「しかし参ったなぁ。しょうがない、下見でもするか」


吉川  「本物のサンタなんて実在したんですね」


サンタ 「当たり前だろ。いなかったら世間の親御さんが大変だ」


吉川  「逆じゃないですか。普通、親が……」


サンタ 「えー!? まじで! アレって親だったの? 夢壊すなよぉ」


吉川  「本人が! 本人じゃん! 夢見がちすぎだよ」


サンタ 「でもほら、親のいない子にはね。私がちゃんとあげないと」


吉川  「あぁ、そういうことですか」


サンタ 「親が他界してしまった子とか」


吉川  「そうですね」


サンタ 「親をこの手で殺めてしまった子とか」


吉川  「ドラマが重いな! それは悪い子だからプレゼントもらえないんじゃない?」


サンタ 「主に中年層に多いんだよね」


吉川  「子じゃないでしょ! 確かに親は他界してるかもしれないけど。むしろ親じゃん」


サンタ 「じゃ、いらないってのか!? 中年はファンタジーする権利がないとでも!?」


吉川  「いや、そういう意味じゃないですけど。でも、なにあげるんですか? 中年層に」


サンタ 「それはほら、遊戯王のスターターデッキとか」


吉川  「やらないでしょ。遊戯王は。中年になってから新規でやるの辛いよ?」


サンタ 「スターターデッキだからすぐできるよ。会社の昼休みとかに」


吉川  「しないよ! しかも会社で。仲間を誘うハードルが高すぎるだろ」


サンタ 「部長、デュエルどうです? はっはっは、負けたら自主退社だぞ。みたいな」


吉川  「なんかすごいリスキーじゃん! 背負うものが多すぎるよ」


サンタ 「よぉし、死者蘇生で現場復帰だ」


吉川  「さすが、詳しいな」


サンタ 「時の魔術師の効果で、部長は定年退社だ!」


吉川  「白熱しちゃってる。しかし、それはちょっと病んでる大人じゃないか」


サンタ 「白熱しすぎた。暑いなぁ。もう、つけヒゲとか取ろう」


吉川  「えー!? つけヒゲ!?」


サンタ 「赤い服も脱ぐ。暑いから」


吉川  「なんか、普通のおっさんになってる……」


サンタ 「やべ! お母さん、パンツに名前かいてるじゃん。はずかしー」


吉川  「本当だ。ゴムのところに!」


サンタ 「水泳の授業の時、わからなくならないように書いたんだ」


吉川  「水泳の授業うけるんだ。大勢で」


サンタ 「寒中だけどね」


吉川  「大変ですね。三田さん」



暗転

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