追っかけ
藤村 「うわー! 吉川さん、大ファンです!」
吉川 「どうもありがとう」
藤村 「吉川さんの他人に媚びないロック魂にずっと憧れてます」
吉川 「フフッ。サンキュー」
藤村 「ロックスターとして常に尖り続けるその姿勢がたまらないんです」
吉川 「まぁ、時代も色々と変わってきてるけどね」
藤村 「そうなんですよね。You Tubeのチャンネルも始まりましたし」
吉川 「まだ始めたばかりで手探りだけどね」
藤村 「あえてなんですよね! あえてチャンネル登録者数も少なく再生数も絞ってるんですよね。たまらないなぁ、その反骨心!」
吉川 「そう言われるとそういう面もあるかな」
藤村 「昔、雑誌のインタビューで語ってた『ロックというのはやせ我慢だから』というのがすごく印象に残っていて。俺も吉川さんみたいに格好良く生きたいと憧れました」
吉川 「懐かしいことを言うなぁ。若かったからね。そういう事を言ったこともあったかもな」
藤村 「なに言ってるんですか! 吉川さんは今でもロックですよ! 最高ですよ」
吉川 「そうかな。サンキュー」
藤村 「そういえば新曲も!」
吉川 「あぁ、半年前に出したやつかな」
藤村 「そうですそうです。あのCMタイアップを狙ってたっぽいけど、特に何ともタイアップしてないやつ!」
吉川 「色々あるんだよ、こっちにも事情が!」
藤村 「まだ聞いてはいないんですけど、いいですよねー。吉川さんっぽさ全開で!」
吉川 「ま、まだ聞いてないの? もう半年くらい経つけど?」
藤村 「それもあえてですね。そう簡単に消費するような資本主義的な音楽じゃないという吉川さんの教えを守ってる」
吉川 「あー。昔はそういうことも言ってたけど、聞くのは聞いてくれたほうがいいな」
藤村 「そんなこと言わないでくださいよ! 吉川さんはいつまでも尖り続けてて俺の憧れなんですから。吉川さんは今でもビンビンにロックですよ!」
吉川 「そっか」
藤村 「その格好も! どこで買うんすか、そんな時代遅れの服。ゴミ漁ったんですか? しびれるなぁ、ロックだなぁ」
吉川 「そういう言い方やめろよ」
藤村 「なんすか、その靴。何年履いたらそこまでボロボロになるんですか? ロックすねぇ」
吉川 「わざと言ってるのか?」
藤村 「若い頃にちょっとチヤホヤされただけで調子こいてまったく人間的に成長できておらず、性格が終わってるから若い世代に支持されず仕事も全然ないって辺りも媚びてない感じが素敵なんですよねぇ。まさにロック!」
吉川 「お前なんかすげぇ棘あるな。なんなんださっきから」
藤村 「俺はもう大ファンっすよ。そのロックなところが」
吉川 「ロックって言えばとりあえず褒めてる形になると思ってない?」
藤村 「吉川さんといえばロックですから。ゴミ溜めに集るハエにも匹敵する輝かしい存在。俺たちファンからしたら神様ですよ。神様にも疫病神とか色々いますけど」
吉川 「表現が全部悪口のやつ。お前本当はファンじゃないだろ?」
藤村 「なに言ってるんですか! ファンですよ。吉川さんのファンしかこんなひどいこと口にしませんよ」
吉川 「ひどいとは思ってたんだ……。なんか悪かったな」
藤村 「そんな、そんな! 謝らないでくださいよ。今更謝って罪を帳消しにしようったって無理ですって。長い間ファンたちに蓄積した報いをきちんと受け止めてくださいよ」
吉川 「思いじゃないんだ。報いなんだ」
藤村 「俺たちファンはずっと吉川さんについていきますから!」
吉川 「ついてこなくていいよ。もう帰ってくれ」
藤村 「そんなぁ、地獄まで追っかけますよ!」
吉川 「追っかけはコリゴリだよ。トホホ~」
暗転
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