配膳ヒト
藤村 「ご注文の料理をお持ちしたヒト~」
吉川 「え。あ、はい」
藤村 「ご注文の料理をお持ちしたヒト~。トレイから取ってほしいヒト~」
吉川 「あ、こっちが自分で取るんですか?」
藤村 「ありがとうございましたヒト~」
吉川 「なに? どういうシステムなんですか?」
藤村 「人型配膳ヒトだヒト~」
吉川 「あ! ひょっとして、猫型配膳ロボットみたいなやつ?」
藤村 「洞察力に光るものがあるヒト~」
吉川 「へ~。あまりにも自然だから普通の店員さんかと思った。これ、ロボットってこと?」
藤村 「ヒトだヒト~」
吉川 「人なのかよ! じゃあ店員じゃねーか」
藤村 「配膳しかできないヒト~」
吉川 「使えない店員じゃないか。だいたいなんだよ、語尾のヒト~って。猫型がにゃんってつけるのはまだわかるけど。人間の鳴き声は『ヒト~』じゃないだろ」
藤村 「脆弱性を突かないで欲しいヒト~」
吉川 「脆弱性なの? プログラムみたいに言わないでくれる? 人間だろ。あとこれ。ライスじゃなくてパンで頼んだんだけど。なんでライスなの?」
藤村 「ライスの方が合うヒト~」
吉川 「それはお前の好みだろ。こっちはパンだっつってるんだよ」
藤村 「パンなら語尾にパンってつけるヒト~」
吉川 「俺はパンじゃないよ。人だよ。見てわかるだろ」
藤村 「ならヒト~って言うヒト~」
吉川 「言わないよ。たとえパンだったとしてもパンの鳴き声は『パン』じゃないだろ。そもそもなんだよ鳴き声って、パンにそんな概念自体ないよ」
藤村 「パンのくせにネチネチうるさいヒト~」
吉川 「パンじゃねーって! 客だよ客!」
藤村 「ふふふ……。語尾が『キャク~』になってるヒト~」
吉川 「今のは語尾じゃないよ! おかしいだろ、語尾に『キャク~』ってつける客」
藤村 「そろそろ充電が切れてきたヒト~」
吉川 「充電いらないだろ。人間なんだから」
藤村 「ストロング・ゼロでチャージするヒト~」
吉川 「それで充電するシステムなの? 仕事中だろ? いいのか?」
藤村 「カーッ! メーター上がっちゃうヒト~」
吉川 「普通に飲んでるな。店員が」
藤村 「お客さんもいかがヒト? 今ハッピーアワーだヒト~」
吉川 「そんなシステムある店だったの?」
藤村 「私が個人的にハッピーアワーだヒト~」
吉川 「お前のハッピーさ加減は知らないよ。頼むからパンを持ってきてくれよ」
藤村 「持ってきてくれキャク~、でしょ?」
吉川 「いや、言わないよ。ラノベのキャラじゃないんだから特殊な語尾をつけて人生を送ってないよ」
藤村 「お酒は? ハッピーアワーよ?」
吉川 「なんか客引きの外国人みたいになってきたな。じゃ、グラスワイン。パンも」
藤村 「私はただの配膳ヒトだヒト。石をパンに変えたり水をワインに変えたりできないヒト~」
吉川 「こっちもそこまで望んでないよ。別に救世主だと思ってないから。見た感じ全然救ってくれそうにねーもの。持ってきてくれるだけでいいんだよ」
藤村 「わかったヒト~。一服してから持ってくるヒト~」
吉川 「すぐに持ってきてくれよ。パンだけでも。なんで一服挟むんだよ。持ってきてから一服でいいだろ」
藤村 「よく聞こえませんでした。もう一度お願いします」
吉川 「おい、SIRIみたいな対応すんなよ。人のくせに!」
藤村 「わかったヒト。急いで持ってくるヒト~」
吉川 「頼んだよ」
藤村 「お待たせしたヒト~。ちょっと通して欲しいヒト~。どいて~。あ。やべっ!」
吉川 「あぁ! なんでこぼすんだよ、この距離で!」
藤村 「私は配膳しただけヨッパ~」
吉川 「語尾変わってんじゃねーか」
暗転
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