藤村 「大丈夫っすよ。全然リラックスでおなしゃす」


吉川 「そうは言われても、やっぱり緊張しちゃいます」


藤村 「さらっと普通に一言言ってくれればいいので」


吉川 「そういうのが苦手で。緊張して真っ白になっちゃうタイプなんで」


藤村 「あぁ、確かに。心なしか白っぽくなってますかね」


吉川 「え? なにか白くなってる?」


藤村 「でも大丈夫っすよ。だいたい人って白いっすから」


吉川 「すごい適当なこと言ってない? 見た目じゃないよ? カメレオンじゃないんだから。頭が真っ白になっちゃう」


藤村 「あぁ、確かに。でも白似合うから全然いけてますよ」


吉川 「いや、見た目じゃないんだよ。急に白髪になったわけじゃない。矢吹ジョーじゃないんだから」


藤村 「誰すかそれ。あ、アレっすか。吹き矢の人?」


吉川 「違うけどね。吹き矢の人って誰のこと指してるのかもわからないけど」


藤村 「でも、まぁ。白くなってもあとで美容室でカラーリングしてもらえば大丈夫んなんで」


吉川 「だから外見じゃないんだよ。頭の中。中が真っ白」


藤村 「あぁ、確かに。なんかホルマリン浸けされてる脳とか見ると、思ったより白くてビビりますよね」


吉川 「見た目じゃないんだよ。見た目ですらないよ。なんなんだよ、その共感。気持ち悪いな。脳が白くなるんじゃなくて、中」


藤村 「内部? 内部っすか? わかります」


吉川 「わかってないだろ。内部の話でもないんだよ。脳の内部って脳外科の手術でしか見れないやつでしょ。わからない? 頭の中。考え。思考」


藤村 「あぁ、確かに。白っぽい時ってありますよね。でもそれって言ってみれば何も描かれてないキャンバスなんで。自由になれるってことっすから」


吉川 「なんだそのポジティブさ。頭が真っ白になった時にそんな素敵なこと考えられるのある種の才能だろ。何も考えられないから真っ白っていうんだよ」


藤村 「でもほら、朱に交われば赤くなるって言う言葉もあるんで。だいたい周りの奴らは赤いから平気っす」


吉川 「なにそれ。全員共産主義なの? 怖いな」


藤村 「みんな赤の他人ですから」



暗転

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