罰ゲーム

藤村 「それで負けた方は罰ゲームです」


吉川 「うわー、嫌だなぁ。絶対にやりたくないよ。どうせろくでもないものだろ?」


藤村 「まぁ、罰ゲームだからね」


吉川 「ちなみにどんなの?」


藤村 「なにが? 罰ゲーム?」


吉川 「うん。普通流れからしてそうだろ? 今日のコーディネートのポイントを突然聞いたりしないからね」


藤村 「いくつか案はある。まず一つ目が、あらゆる願いを瞬時に叶えるってやつ」


吉川 「ん? 罰ゲームの話?」


藤村 「そうそう、罰ゲーム」


吉川 「あらゆる願いを? 叶えられたら嬉しいけど? どこが罰ゲーム?」


藤村 「だからすべてのあらゆる願い。人間というのはそうやって即時に充足されていくと欲求が消えていく。やがて生きる気力すらなくなり、欲していたはずのものに囲まれて絶望するんだ」


吉川 「哲学的だな。それを罰ゲームでやるの?」


藤村 「きついぜー、すべて叶える系は」


吉川 「そういう罰になるとは思わなかった。成立する? 他には?」


藤村 「他にはね、ものすごいセレブ生活を一ヶ月してもらい、そしてそれが終わったのに生活レベルが落とせずに人生が破綻していくっていう罰ゲーム」


吉川 「なんなの? その最初にめちゃくちゃ嬉しいことがある罰ゲーム。むしろ嬉しいでしょ」


藤村 「生活レベル落とせないよ? 300円を超えるジャージー牛乳を飲んだ後に185円の牛乳に戻れるかい?」


吉川 「戻れそうな気がするけど……」


藤村 「お惣菜だってセレブ生活の時は割引の時間を待たずに買えるんだぞ?」


吉川 「お前の想像するセレブ生活、微妙にせこいな」


藤村 「セレブだった頃はレジ袋だっていくらでも買えたのに」


吉川 「別に今だって買えるよ。そのくらいで生活レベル落とす落とさないの話にはならないよ。他には?」


藤村 「他の罰ゲーム? そうだな、うんこの匂いのするマスクを付ける」


吉川 「急に罰! なにその純粋な罰ゲーム。今までの人間性や哲学的な感じはどうしちゃったの? そんなシンプルに嫌な罰ゲームあるのに、なんでセレブ生活出した?」


藤村 「これはメチャクチャ臭いから」


吉川 「そうだよな。罰ゲームだもん。真っ当すぎる。嫌だけど。絶対嫌な罰ゲームだけど、真っ当! 他には?」


藤村 「あとは斬首」


吉川 「死!? 罰ゲームで、死? ビックリしたな。それは罰ゲームですまされないよね?」


藤村 「なにが?」


吉川 「だって犯罪だから。殺したら。個人的な罰ゲーム以上に刑事罰があるから」


藤村 「いや、斬首されるのは相手の方」


吉川 「相手の方?」


藤村 「お前の罰ゲームだったら、俺が斬首される」


吉川 「なんで? なんで? 意味がわからない。お前が一番罰受けるの?」


藤村 「罰ゲームなんかで友人を失ってしまったという罪悪感を抱えて、その後の人生をすごすという罰ゲーム」


吉川 「それは嫌だけど! 嫌だけども犠牲が大きすぎない? お前の被る犠牲がさ」


藤村 「いや、俺が罰ゲームになったらもちろんお前が斬首で」


吉川 「嫌だよ。同意しかねるよ!」


藤村 「でも一応自殺扱いだから刑事罰にはならないかと。自殺幇助とかになるとまずいので全然知らないところで斬首してもらって」


吉川 「本気で方法を模索するなよ。斬首の。バカなんじゃないの?」


藤村 「まぁ、このくらいかな。どの罰ゲームを選ぶかはもう負けた方が選ぶんでいいよね」


吉川 「だって前半二つはあんまり俺にとって罰感ないんだよ。俺は割と受け入れられるよ?」


藤村 「俺もうんこ臭マスクならギリで」


吉川 「いけるの? まぁ、罰ゲームとしてやらなきゃいけないなら、そうだけど。じゃ、やるか」


藤村 「おう」


……


……


吉川 「負けた……」


藤村 「じゃ、罰ゲーム、選んでもらいますか! どれにしましょう! 人間性が試されるなぁ!」


吉川 「斬首で」


藤村 「……え?」


吉川 「斬首」



暗転

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