リアクション

藤村 「はい! というわけでですね、今日は吉川さんに来ていただきました」


吉川 「よろしくお願いします」


藤村 「今日は吉川さんに、日本のフルーツサンドを食べてもらって、そのリアクションを見たいと思います」


吉川 「食べるだけでいいんですよね?」


藤村 「はい。素直に思った通りに感想を言ってくれて構いません。ところで吉川さんは日本食は結構食べますか?」


吉川 「え? あ、はい。日本食ばかり食べてます。普通に」


藤村 「なるほどー。もう日本食の虜みたいな。結構そうやってハマって、母国に帰ってから懐かしがる人も多いみたいですね」


吉川 「ん? そうなんですか。へぇ」


藤村 「ちなみに吉川さんはどちらのご出身ですか?」


吉川 「ボクは長野です」


藤村 「そうなんですかぁ。そちらと比べて日本はやっぱり結構違いますか?」


吉川 「ん? ん? 日本ですよ。日本の長野。長野県」


藤村 「やっぱりよく言われるのが治安とか、サービスとか、ゴミが落ちてないとか」


吉川 「あの、そういうのって海外から来た人に対して聞くものなんじゃないですか? ボク日本生まれの日本育ちの日本人なので」


藤村 「あー、そうですか。じゃ、小さい頃からアニメとかで日本に親しんできたんですね」


吉川 「日本人だからね。親しんでるよ。むしろ他の国とは親しんでない」


藤村 「日本のフルーツサンドは食べたことありますか?」


吉川 「その、日本のって言い方がいちいち引っかかるんですけど。他の国のことは知らないんで。フルーツサンドはコンビニとかで見かけはしますけど買ったことはないですね」


藤村 「では今日は初挑戦ということでね。ぜひ、日本の思い出として食べていただきたい」


吉川 「生まれてこの方、日本の思い出しかないんですよ。ボクが日本人だってわかってます?」


藤村 「そうなんですねー。ということは結構日本の食べ物に対してシビアな意見が出るかも知れませんね」


吉川 「……うん。あなた人の話し聞いてないってよく言われませんか?」


藤村 「そんなことないですよー。ぜんぜん大丈夫です」


吉川 「なんかチョイチョイ会話が噛み合ってない気がするんだよね。全然あってないことはないんだけど、強引に翻訳すれば通じるけどネイティブの日本人はしない会話みたいな」


藤村 「さ、というわけでフルーツサンドを買ってきましょう。あ、その前にアレルギーとかありますか? ビーガンだったり宗教上の問題とかは?」


吉川 「特にないです」


藤村 「本当ですか? 納豆や梅干しも食べられます?」


吉川 「完全に聞き方が日本初心者の外国人に対するものだな。それを日本人に聞くのなめてるだろ?」


藤村 「嫌いなものとかってないんですか?」


吉川 「嫌いというか白子が苦手ですね」


藤村 「あー、そうですか。じゃ今回のフルーツサンドは厳しいかも知れませんね」


吉川 「なんで? 白子つかってる部分ないでしょ。そんなナマモノっぽいフルーツサンドないよ」


藤村 「でも色が白いですし」


吉川 「別に色で嫌いなわけじゃないから。白子知ってる?」


藤村 「いや、ちょっと聞いたことないですね。そちらの国ではメジャーな食べ物なんですか?」


吉川 「日本だよ! そっちの方が知らないだろ」


藤村 「そうですね。世界は広いですから。これから私も色々試して知りたいと思います」


吉川 「グローバルな視点で寛大な心を示した風にするなよな。お前の国でもあるだろ。世界の広さよりも見識の狭さを疑えよ」


藤村 「はい。では日本のフルーツサンド注文してみようと思います。うわー、色々ありますね、どれがいいですか?」


吉川 「えーと、マンゴーのと、あとミックスのやつがいいかな」


藤村 「こちらの赤いグジョッとした気持ち悪いのは?」


吉川 「イチゴだろ。わかるだろ、見りゃ。見たことないの、イチゴ」


藤村 「ちょっとこっちではあんまり馴染みないですねー」


吉川 「その認識でよくフルーツサンド屋を紹介しようと思ったな。誰もが知ってるよ」


藤村 「へぇ、そちらではお馴染みなんですね」


吉川 「どちらでもお馴染みだよ。世界中にあるよ、イチゴなんて」


藤村 「ではその三種類を注文してみましょうか。楽しみですね」


吉川 「知らないのお前だけだろ。こっちは知ってるもん。想像通りの感じだよ、これ」


藤村 「はい、こちらが日本のフルーツサンド屋のムガベベさんです。ハンマ、ダリモガ、フルーツサンドモガッヒ、マリムマリム、ホイ、マサマルート?」


吉川 「あ、全然知らないやつだったわ」



暗転

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