問診

藤村 「本日はどうしました?」


吉川 「なんか腰が痛くてですね」


藤村 「腰が。腰の骨がバラバラになりました?」


吉川 「そこまでじゃないです。それ普通、病院にも来れませんよね」


藤村 「おタバコは一日何本くらい吸いますか?」


吉川 「吸わないです」


藤村 「吸わないっ!? 一本も?」


吉川 「ええ。いいんじゃないですか? 吸った方がいいってことはないでしょ」


藤村 「ということは他になにか吸ってます?」


吉川 「なにかってなんです? もし吸ってたとしてそんなの医者に言えますか?」


藤村 「仕事で甘い汁を吸ってたり」


吉川 「慣用句的なのも? 人聞き悪いこと言わないで下さい」


藤村 「飲酒は一日にどのくらいしますかね?」


吉川 「ほとんど飲まないですね。付き合いでたまに、くらいです」


藤村 「甘い汁は?」


吉川 「飲まねーって! なに? 甘い汁ってジュースみたいなことなの?」


藤村 「そうですか。では指の方を見てください」


吉川 「はい」


藤村 「大きく口を開けて」


吉川 「んぁ」


藤村 「舌をできるだけ出して」


吉川 「んべ」


藤村 「夢をあきらめないで」


吉川 「んん?」


藤村 「勇気を振り絞って」


吉川 「ん?」


藤村 「クヨクヨしないで」


吉川 「ちょっと待って。概念じゃないですか? なにをどうすればいいんですか」


藤村 「あ、難しいですか? じゃ、逆にクヨクヨしてください」


吉川 「わかんねーんだって! どうやるんだよクヨクヨ。クヨってなんだよ!」


藤村 「はい、白目を見ますから上を向いて」


吉川 「はい」


藤村 「そのまま右耳をパタパタさせて」


吉川 「無理です。できません」


藤村 「無理なら左でもいいです」


吉川 「右だからできないわけじゃないんです。耳ってパタパタできないでしょ。ダンボじゃないんだから」


藤村 「そのまま右の触覚をピクピクさせてください」


吉川 「ピッコロさんじゃないんだから。ないよ、触覚」


藤村 「はい、結構です。えーとそうですね。ざっと見たところピッコロさんではありませんね」


吉川 「言ったよ! ピッコロさんかどうかはもう第一印象でわかれよ!」


藤村 「普段運動とかはされます?」


吉川 「いえ、特に。忙しくて」


藤村 「では忙しくなければするということですか?」


吉川 「いや、どうだろ。あんまりしないかもしれません」


藤村 「そうやって言い訳ばかりして自分を正当化して努力もせずに年を取って気づいたらなにもないことに気づくことはありますか?」


吉川 「問いかけ方がキツイな。鋭角すぎない?」


藤村 「ではレントゲン撮りますね。あごをこちらに乗せて、胸を台につけて、指ピースでお願いします」


吉川 「指ピース意味あります?」


藤村 「ないです」


吉川 「ないんだ。せめてなんか理由付けしてくれるのかと思った。そういうのも放棄してるんだ」


藤村 「えーと、骨には異常はないですね。ただ指の部分がピースになってますが、これは?」


吉川 「しろって言ったから」


藤村 「意味ないのに」


吉川 「なにを試されたの? これはなに? どうするのが正解だったの?」


藤村 「恐らく運動不足とストレスだと思います」


吉川 「そうですか」


藤村 「最近ひどいストレスにあったりしました?」


吉川 「はい、ここに来てから」


藤村 「でしょうね」


吉川 「なんだよ、でしょうねって! 自覚あるならやめろよ」


藤村 「処方箋を出しておきますので毎食後14分から15分の間にお飲みください」


吉川 「一分間しかリミットないの? そんなきっかりしなきゃダメ?」


藤村 「過ぎちゃった場合は、言われたことの一つもできないんだと落ち込んでください」


吉川 「薬自体がストレスの原因になってない? あと粉のやつ飲むの苦手でそんなちゃっちゃと飲めないんですけど」


藤村 「そうですか。ではお薬のタイプを甘い汁に変えておきますね」


吉川 「どうしても吸わせたいの?」



暗転

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