タイムパトロール

藤村 「動くな! タイムパトロールだ」


吉川 「タ、タイムパトロール? ひょっとしてあのSFとかに出てくる」


藤村 「時間法違反の疑いがあるためにタイム職務質問をする」


吉川 「ええ? 何もしてないですよ。そんな能力ない」


藤村 「最近、子供の頃に比べて時間が経つのが早いなぁ。1年なんてあっという間だよ、と感じる?」


吉川 「まぁ、はい」


藤村 「クロだな」


吉川 「クロなの? それで何か確定しちゃったの?」


藤村 「ぐっすりと8時間くらい寝たと思ったら外が暗くなってて20時間寝ていた、ということがある?」


吉川 「あります。ちょっと激務で……」


藤村 「真っ黒だ」


吉川 「いや、それタイムパトロールの管轄なの? 寝たらダメなの?」


藤村 「朝の5分は夜の30分くらいの価値があるとわかっていながら寝る前にウダウダとスマホを見ちゃう?」


吉川 「でもそれって誰でもあることでしょ」


藤村 「極悪犯だな」


吉川 「そんなに? それでタイムパトロールが来ちゃうの?」


   ピリリリピリリリ


藤村 「あ、タイムポケベルが鳴ってる。呼び出しだ」


吉川 「タイムポケベル? 未来の道具なんだよね? 一応」


藤村 「この辺にタイム公衆電話はないか?」


吉川 「ないと思います。どの時代にいってもタイム公衆電話という存在はきっとない」


藤村 「タイム家電を借りるしかないか。そうなると上野で謎のアジア人から買った偽造テレカが使えないな」


吉川 「タイムパトロールが買うなよ! だいたいテレホンカードがそれなりに利用されてたのたかだか十数年だろ」


藤村 「お前にはまだ聞くことがある。口答えするならタイム棒でしばくぞ!」


吉川 「物騒なこと言うなぁ。なにそのタイム棒って、麻痺機能とかすごい機能がありそうで怖い」


藤村 「硬いからすごい痛いぞ!」


吉川 「原始人の武器か! せめて電気でシビシビしたりする機能をつけてくれ」


藤村 「昨日の夜、なにをしていた?」


吉川 「え? 昨日の夜? 急に言われても」


藤村 「急じゃない! 来週のお前に聞いたら全然覚えてなかったから戻って聞いてるんだ」


吉川 「そんなのボクにとっては初めてだもん。ってことは来週また同じようなやりとりをするの?」


藤村 「こんなにいちいちツッコまれたのは初めてだ。未来のお前は話が早かったのに」


吉川 「そりゃ、この時を経てるからな。二度も偽造テレカにツッコまないよ。無視だよ、そんなの」


藤村 「二度じゃない。来週から一日ごとに少しずつ戻ってきた」


吉川 「これから毎日来るのかよ。一週間後まで。すごい面倒だな」


藤村 「さぁ言え! 昨日の夜何をしていた!」


吉川 「えー、ちょっと待って。思い出すから」


藤村 「言わないならタイム自白剤を打つぞ」


吉川 「タイム自白剤! そんなものまであるのか」


藤村 「1920年に開発された、どんな隠し事も吐き出すという恐ろしい薬だ」


吉川 「未来の技術でやってくれよ! タイムパトロールなんだから。なんで装備が全部過去の遺物みたいなものなんだよ! いけるんだろ、未来に!」


藤村 「未来のものをそう簡単に過去に持ってこれるわけがないだろ! 管理が厳しいんだよ」


吉川 「お役所仕事だからしょうがないのか」


藤村 「で、昨日は?」


吉川 「あ! ゲーム? いや、でも0時きっかりにダウンロードしましたよ。フラゲじゃない!」


藤村 「フラ? なに?」


吉川 「フライングゲットでしょ。発売前に買っちゃうやつ。そういうの取り締まってるんじゃないの?」


藤村 「金曜に売ってる早売りのジャンプみたいなもの?」


吉川 「そうです。けどタイムパトロールなんじゃないの? 過去から来たの? この時代のことあんまりわかってない?」


藤村 「わかってる。彼ピッピ」


吉川 「無理やり今っぽい言葉を脈絡なく使うおじさんみたいだな」


藤村 「未来ではタイム彼ピッピと言う」


吉川 「そんな未来こないよ。もう彼ピッピ自体若い子は言わないよ」


藤村 「タイム侮辱罪で逮捕するぞ?」


吉川 「タイム要素関係ある? あともうないですよ。ご飯食べてお風呂入ってゲームやって寝ました」


藤村 「ごはんは何を食べた!」


吉川 「そこまで聞くの? お好み焼きですけど」


藤村 「お前の冷蔵庫のお好みソースな、賞味期限がきれてるぞ! 時間法違反の疑いがある!」


吉川 「タイムパトロール、暇すぎだろ」



暗転

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