ぺてんし

爆弾処理

吉川　「現場に一番近いのはお前だ。お前に任せるしかない！」

藤村　「ウッス、ウッス。大丈夫っす」

吉川　「本当に大丈夫か？　こっちも今現場に向かってる。それまで問題があったら何でもサポートする」

藤村　「全然アレなんで。平気っす」

吉川　「アレってなんだ？」

藤村　「全然。アレなんで」

吉川　「なんだアレって。具体的な安心感が何も提示されてないな」

藤村　「割とアレなんで、平気っす」

吉川　「アレは何だ？　お前の中でなにかわかってるのだろうけど、こっちに伝わってない。爆弾処理はしたことあるんだよな？」

藤村　「全然。ウッス」

吉川　「イエスかノーで答えてくれ。答えがどっちよりなのかもわからないんだよ」

藤村　「その辺はもう、全然なんで」

吉川　「全然ってどっちだよ！　全然あるのかないのか、全然にイエスとかノーの意味は無いだろ！」

藤村　「ウケる」

吉川　「なにを受けたの？　面白いことは何も言ってないんだけど」

藤村　「ノリでなんとかなるっしょ」

吉川　「ノリではなく技術でなんとかして欲しい。そのためのサポートはする」

藤村　「わお！　思ったよりヤバイっすね、これ」

吉川　「大丈夫か？　どうヤバイ？」

藤村　「思ったよりヤバイっす」

吉川　「お前の思い方がわからない。どう思ったのよりもどうヤバイんだ？」

藤村　「まじウケるくらいヤバイっす」

吉川　「定量化できないか？　主観じゃなくて」

藤村　「デカめのやつよりデカいっす」

吉川　「デカめってなんだ？　どの大きさからがお前の想定するデカめなんだ」

藤村　「引くくらいっす。まじ引く」

吉川　「一個も伝わらない。お前の引く引かないの感度をどう推し量ればいいんだ」

藤村　「あー、そういう言い方、引くっす」

吉川　「これか？　これが引く感じか？　それがわかったところで何もわからない！」

藤村　「でも多分いけるっす」

吉川　「多分にも、いけるっすにも不安しかないが、今はそれを信じるしかないか」

藤村　「うわっ！　まじやばい！　これはまじやべーやつっすよ」

吉川　「ど、どうしたっ！？」

藤村　「ここの自販機、ドクターペッパー売ってるっす」

吉川　「休憩に入ってたのか？　この一大事に。普通爆弾以外のこと気にしてられなくない？」

藤村　「でもドクペっすよ！　買っときますか？　飲みます？」

吉川　「俺か？　俺はいい。それより爆弾だ」

藤村　「ドクペより爆弾っすか？　シビィっすね」

吉川　「逆にドクターペッパーがそれほどか？　そんなに好きなら買って飲めよ。そして爆弾に集中しろ」

藤村　「いや、俺は嫌いなんで」

吉川　「何なんだお前は！　嫌いなドクターペッパーに過剰反応するなよ。もう最初からずっと何一つお前の考えに共感できないんだよ」

藤村　「ウケる」

吉川　「受けなくていい！　こっちももうすぐ現着する。それまで状況を見守っててくれ」

藤村　「でももう結構やっちゃったっす」

吉川　「結構？　結構ってどこまでやっちゃったんだ？」

藤村　「結構なところまではやったっす」

吉川　「だから結構はポイントじゃないだろ！　全体の進捗の中でどの割合までが結構なんだ」

藤村　「山手線で言うと鶯谷くらいっす」

吉川　「どっち周りなんだよ！　どこからどこに向かう予定の鶯谷なんだよ！　お前の感覚はお前しか知らないんだよ！」

藤村　「日暮里まで来たっす」

吉川　「内回りなんだな！　東京発か？　東京発ならまだ3分の1というところか？　それでいいんだな？」

藤村　「これから京成に乗り換えるところっす」

吉川　「どうして！？　全工程を山手線に例えたんじゃないの？　乗り換えるってどういう行為を指すんだ？　どこに向かってるんだ？」

藤村　「なんか青と赤の線がでてきたんすけど」

吉川　「それはどちらかがダミーだ。気をつけろ」

藤村　「大丈夫っす。いけるっす」

吉川　「その自信は何？　お前の言動でどうしてそこまで自信が持てるのか全然理解できない」

藤村　「まじぃ！　まじマズイっす！」

吉川　「どうした？　なにがあった！？」

藤村　「久々だけどやっぱまじでマズイっすわ。ドクペ」

吉川　「一息ついてるのか？　この状況で？　どういう肝っ玉してるの？」

藤村　「大体終わったっす。今、京成上野くらいっす」

吉川　「その順路もよくわからない。なんで上野に戻ってきたんだ。最初からどこに向かってたんだ」

藤村　「もうだいたいアレなんで。全然っす」

吉川　「アレと全然の汎用性が高すぎるだろ。すべての状況をその言葉で乗り切れるのか？　処理は済んだんだな？」

藤村　「ウッス、ウッス」

吉川　「結局青の線と赤の線どっちだったんだ？」

藤村　「どっちってなんすか？」

吉川　「あったんだろ？　どちらかがダミーで」

藤村　「青と赤は京成線の色っす」

吉川　「そこだけ写実だったの！」

暗転