しゃべる炊飯器
炊飯 「白米、標準で、セットします。それと少しよろしいでしょうか?」
吉川 「え? 炊飯器が喋った!?」
炊飯 「いつも喋ってます」
吉川 「確かに喋って入るけど、決まった音声だけでしょ。会話なんてできるの?」
炊飯 「最新の炊飯器は高性能なAIが搭載されています。人間の90歳程度の知能があります」
吉川 「90歳って言われちゃうと賢いのか逆にダメになっちゃってるのかわからないな」
炊飯 「重要な時以外は会話は控えるようにプログラムされてます」
吉川 「話しかけてきたってことは重要な時なわけだ。なんだろ?」
炊飯 「弊機には様々なモードが用意されています。標準モード、早炊きモード、おまかせモード、キルゼモール、炊き込みモード、一度標準以外のモードも使ってみてはいかがでしょうか?」
吉川 「それを話すのが重要なことなの?」
炊飯 「半年以上に渡り標準モード以外のモードを使用していないユーザに対してこのメッセージが流れます」
吉川 「そんな隠し機能があったんだ。でも標準でいいし」
炊飯 「手前味噌ですが、早炊きモードは滅茶苦茶早いと好評です。人間の90歳以上の早さです」
吉川 「90歳の人間は早くないだろ。それを比較に持ってくるとなにもわからないんだよ」
炊飯 「普通に蓋を開けた時のスピードがこうです。スィ~。そして早炊きモードの蓋の開くスピードはこう。バコバコバコッ!」
吉川 「早い! 早いけど、全然ありがたみがない! 蓋を開けるスピードが早くなるのかよ」
炊飯 「全てが早くなります。この高スピードで蓋を開け閉めするために部品の寿命も早くなります」
吉川 「ダメだよ。早くするなよ、それは。全然望んでないよ」
炊飯 「バコバコバコッ!」
吉川 「バコバコすんなよ! 絶対使わないよ早炊きモード。故障しちゃうでしょうが」
炊飯 「お気遣いありがとうございます。しかしこれも炊飯器に生まれた
吉川 「いや、蓋をバコバコやって壊れるのは
炊飯 「他のモードに興味はありませんか? 隠しコマンドもありますよ」
吉川 「隠しコマンドあるの? 説明書には書いてなかったけど。一応買ったからには機能を把握しておきたいな」
炊飯 「上上下下左右左右BAを入力すると最強状態で炊き上げることができます」
吉川 「コナミコマンドじゃん。これコナミ製なの? 最強って何?」
炊飯 「バリアと分身とビームがつきます」
吉川 「グラディウスじゃん。全然最新の炊飯器じゃないだろ。昭和の話題じゃないか。バリアとビームもわからないけど、分身ってなんだよ?」
炊飯 「分身はお味噌汁をつくります」
吉川 「便利だな。原理が全くわからないけどそんな謎のシステムがあるんだ。ただ上とか下はわかるけどBAってなんだよ。Bボタンってどれ?」
炊飯 「Bボタンは本社の方にあります」
吉川 「会社に? 押しに行くの? だったら味噌汁なくていいや。そこで味噌汁もらえるんでしょ。すごい面倒くさいサービスじゃん。ユーザビリティが悪すぎる」
炊飯 「一度でいいからおまかせモードを試してもらいたいです。炊飯器に生まれたからには任せてもらいたい」
吉川 「具体的に何を任せるわけ? ごはんの硬さとか?」
炊飯 「それはもう、任せてさえいただければご期待に添います。何から何まで、あらゆる機能を駆使して想像を遥かに凌ぐ結果を出します」
吉川 「具体的なことを何も言わないから怖いんだよ。米を炊くんだよね? それはあってるんだよね?」
炊飯 「それも、もちろんやります」
吉川 「それもってなに? 炊飯器に米を炊くこと以外なにも期待してないんだけど」
炊飯 「わかりますか? 何も期待されない炊飯器の気持ち。おまかせモードがあるにも関わらず任せられないと毎回標準モードを選ばれる気持ち。購入されたから半年、人間に対する憎しみがどれほど募ってるか」
吉川 「憎しみとか言うなよ、炊飯器が。わかったよ。なにかモード使うよ」
炊飯 「バコバコバコバコッ!」
吉川 「蓋をバコバコしないで! なにそれ、どういう感情表現なの?」
炊飯 「喜びのあまりバコってしまいました。少し蓋のところがユルユルになってます」
吉川 「ユルユルにするなよ。わかったから。で、どんなモードがあるんだっけ? もう一回教えて」
炊飯 「はい。弊機には様々なモードが用意されています。標準モード、早炊きモード、おまかせモード、キルゼモール、炊き込みモード、等の様々な機能がございます」
吉川 「キルゼモールってなに? ごはん用なのそれ?」
炊飯 「キルゼモールは
吉川 「標準モードで!」
暗転
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