吉川 「いやぁ、VRってすごいな」


藤村 「待て。まだ外すな。任せろ。俺がお前の目になる!」


吉川 「いや、もう終わったから」


藤村 「安心しろ俺が完璧にナビゲートする」


吉川 「ナビゲートしなくていいよ、はずさせてくれよ」


藤村 「危ない! 前方からなにかが飛んでくる!」


吉川 「なに? 何が来るの?」


藤村 「サッと身をかがめろ!」


吉川 「何だよ! 怖い!」


藤村 「それはサッじゃなくてスッだ。サッと身をかがめろと言ったらサッと身をかがめろ」


吉川 「サッもスッも一緒だろ。スッだったから間に合わなかったとしたら指示する方の問題だよ」


藤村 「今度は下からくるぞ! 声のタイミングに合わせてジャンプだ!」


吉川 「リズムゲームみたいになってるの?」


藤村 「ハイハハーイハイハイハイハーイ! ハイハイハハーイハイハハーイ!」


吉川 「多い! どのタイミングで飛べばいいのかわからん。そんな上級編を練習無しでやらせるなよ」


藤村 「じゃあチュートリアルから始めるか」


吉川 「そもそもVRヘッドをはずさせて欲しいんだけど」


藤村 「それだけはダメだ」


吉川 「それだけはダメなの? なんで!?」


藤村 「言ってなかったけど、それを外すと爆発するんだ」


吉川 「なんだよそれ! 言えよ! なんだよ爆発って!」


藤村 「俺の性欲が」


吉川 「それは知らないわ。お前の性欲が爆発しようが全く構わない。そもそもどんな原理なんだ」


藤村 「本当にいいんだな。俺の爆発した性欲にさらされるのはVRヘッドを外して右も左も分からないよちよち歩きのお前さんなんだぜ」


吉川 「それは嫌だな。よちよち歩きではないが」


藤村 「俺がお前の目になってやるから、安心しろ」


吉川 「なんかお前のやりたい放題になってないか?」


藤村 「おっと右に気をつけろ!」


吉川 「右? こっちか? 何が来るんだ?」


藤村 「国を繁栄させることこそ国民の義務だー!」


吉川 「右ってそういう意味か。なんで急に右翼思想がやってくるんだ。こっちは何も見えないのに。怖いよ」


藤村 「今度は左だ!」


吉川 「はいはい、左翼ね」


藤村 「デュクシ!」


吉川 「痛い! なんで左の脇腹をデュクシするの?」


藤村 「気をつけろと言ったのに」


吉川 「お前がやってんだろ。やらなければいいだろ」


藤村 「チュートリアルだから」


吉川 「これチュートリアルだったの? 右翼が来るくだり必要だった?」


藤村 「目も見えなければ運動神経もないなんて可哀想」


吉川 「目が見えないのはお前のせいだからな」


藤村 「うわっ! すげぇ!」


吉川 「なに? 何が起きてるの?」


藤村 「マジすげぇ……」


吉川 「なにが見えるの? ちょっと教えて」


藤村 「はぁ、すごかった。信じられない」


吉川 「なんだったの? ねぇ! 何が見えたの?」


藤村 「さて気を取り直してチュートリアルの続きを」


吉川 「言えよ! 気持ち悪いよ! 何がすごかったんだよ!」


藤村 「いえ、別にそんな大したものでもなかったから」


吉川 「だから言えって! なんだったの? 大したものかどうかは俺が判断するから」


藤村 「本当に気にしないでいい。逆にあんなの見ない方がいいから。目の毒」


吉川 「余計気になるわ! お前、俺の目になるとか言って何にも役に立ってないからな!」


藤村 「そんなことな……危ない! 避けろ。スッとかがめ!」


吉川 「さっきサッて言ってなかった? もうどうでもいいけど」


藤村 「ナイス。ぶつかるところだった」


吉川 「避けれた? よかったぁ。褒められるとちょっと楽しくなってきた」


藤村 「大丈夫、俺にはちゃんと見えてるから。すべて見切ってる。安心してまかせろ」


吉川 「で、なにが飛んできてるの?」


藤村 「wi-fi」


吉川 「見えてるの?」



暗転

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