宇宙人
藤村 「こんにちは、人類」
吉川 「なんですかあなた。宇宙人?」
藤村 「え、うそ? なんでバレた? こんなに完璧に偽装したのに」
吉川 「本当に宇宙人なの?」
藤村 「宇宙人っていう言い方はあんまり我々のところではしないんですけど。逆にあなたは他の星の人にあった時に『自分は宇宙人です』って言います?」
吉川 「あぁ、言わないかもね。どうも自分たち中心に考えちゃうから」
藤村 「ですよね。そういうところありますよ。多分どこの星の人もそうなんじゃないかな」
吉川 「じゃ、本当に宇宙人なんですね」
藤村 「なんでバレたんですか? この格好おかしいですか?」
吉川 「いや、人類って声かける人いないですよ」
藤村 「そこかー! なんだよぉ。めっちゃくちゃ金と時間をかけたのに、バレたのそこー!?」
吉川 「そういうものなんですね。ご愁傷様です」
藤村 「ということは、そこをミスらなければバレないということでもある?」
吉川 「そうですね。見た感じ、変なところはありません」
藤村 「良かったぁ、あなたを殺せばいいだけか」
吉川 「あー、ダメ! 見つけた! もうこれは決定的なやつ。これを直さないとすぐに見破られる。一番重要なやつ。自分では気づきにくい部分を発見しました」
藤村 「どこですか?」
吉川 「ちょっと、そんな簡単には言えないですよ。言ったら私殺されますよね?」
藤村 「大丈夫。言わなくても殺しますから」
吉川 「待って。すごい教えたい! すごい教えたいとは思ってる。他の人は底まで思わないかもしれない」
藤村 「どこです?」
吉川 「一言では言いづらい。人間の文化に密接に関わることだから」
藤村 「この星の文化は概ね学習しました」
吉川 「あー、でもローカルなルールもあるから」
藤村 「二度漬け禁止とか」
吉川 「よく知ってるな。そういうの」
藤村 「人間をコンクリート漬けにする時は一度目できちんと息の根を止めなきゃいけないとか」
吉川 「そんなルールは知らない。多分ない。ローカルとかじゃないもん。闇のルールすぎる」
藤村 「教えてください」
吉川 「あの、まず人間を装うなら、命の大切さを学んで欲しい」
藤村 「命。大切です」
吉川 「そう。大切。どんなものも」
藤村 「この地球の命を沢山奪ってきたのは愚かな人類だよ」
吉川 「そうなんだけど、人類も命あるから」
藤村 「牛の命も、ショウジョウバエの命も、人類の命も、等しく平等なはず」
吉川 「おっしゃる通り。そうなんですけど、その愚かな部分が可愛いとかってない? そういう感情芽生えない?」
藤村 「特にない」
吉川 「人間を装うならそういうの覚えた方がいい」
藤村 「つまり人類特有の人間の命のみが尊いという思想だ」
吉川 「厳しいこと言うね。でも自分の身が可愛いっていう考え方はありますよね」
藤村 「私は多くの同胞のために危険を乗り越えこの地球にきました。できることなら我が身がどうなったとしても、同胞たちのために成し遂げたい」
吉川 「そういう人もいる! 真面目なタイプ。ただちょっとこうやって話してるとやっぱり人類っぽくなさも出ちゃってるね」
藤村 「もし誰もが違和感を感じるのであれば、それはしかたがない。全員殺すしか」
吉川 「待って! 方法はある! 上手い方法が絶対ある。誰も傷つかない方法」
藤村 「なぜ傷つけるのをそれほど嫌がるの?」
吉川 「そこ! そこ重要! 着眼点がいい! いいよー。その調子」
藤村 「ありがとう。あなたは有用なのですぐに殺すのももったいない気はします」
吉川 「いい気がしてる! その気を大切にしよう」
藤村 「もっと色々教えて欲しい」
吉川 「喜んで教えるよ! じゃ、ちょっとそこで待ってて。色々教える準備するから」
藤村 「はい」
吉川 「ハァハァハァ。あ、警察官。すみませーん。なんか変質者がいて。助けてください!」
警官 「どうしました、人類?」
吉川 「まじか……」
暗転
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