アマビエ
アマビエ 「私の姿を絵に描いて広めなさい」
吉川 「わっ!? アマビエ?」
アマビエ 「そうです。本人です。そっくりさんじゃありません」
吉川 「そうなんだ。へぇ……」
アマビエ 「薄い。なにそのリアクション。親戚の子が中学生になったと聞いた時よりもリアクションが薄い」
吉川 「だってねぇ。2年前なら嬉しかったかなぁ」
アマビエ 「なにそれ? え? ひょっとして疫病はもう根絶されたの?」
吉川 「いやいや、まだ予断を許さない状況です」
アマビエ 「じゃあ私の姿を描きなさいよ」
吉川 「ただなんか、世間の空気的にね。もうしょうがないよねみたいな感じになっちゃってるんで。気にはしているけど、話題の中心に据えるのはもういい感じになってるから」
アマビエ 「人類は愚か! そういう時が一番危ないんだから。さぁ描いて描いて!」
吉川 「いや、疫病自体はまだ緊張感はありますよ。ただアマビエさんは言っちゃ悪いけど一発屋的な。もうちょっと『いたなぁ……』みたいな感じになってます」
アマビエ 「嘘でしょ。だって同窓会でかなりイキっちゃったのよ? 枕返しに『あなたもコツコツと枕を返してればいつか報われる日が来るから』ってアドバイスしちゃったのよ?」
吉川 「意外とやなやつだな」
アマビエ 「ゲームとのコラボの話だっていっぱいあったのよ。シェンムーとか」
吉川 「シェンムーとコラボする予定だったの? どういう層を狙ってるんだ」
アマビエ 「でもそのうちポケモンから話が来る気がしてたから、強気に出てたのに!」
吉川 「多分来ないですね。ポケモンて別にそういうのじゃないし」
アマビエ 「進化してアルマゲビンになるのにっ!?」
吉川 「ものすごい強キャラを望んでません? 世間がアマビエに求めてたのそんな感じじゃないですよ? もっとゆるキャラ的な」
アマビエ 「その辺がね、ちょっとミスマッチと言うか。正しく評価されてないなーって思ってたの。どっちかというとシャネルとか似合うタイプだし」
吉川 「シャネルが似合うタイプの妖怪っていないですよ」
アマビエ 「ブームを当て込んでローンも組んじゃったんだけど。1152回ローン」
吉川 「さすが人間じゃ組めない長さのローンを組むなぁ」
アマビエ 「絵に描かれるからエステも通わなきゃいけないし、ネイルだって気を使うし、縮毛矯正もしたし」
吉川 「それ結構自分本位じゃないですか? なんか人類のためとかじゃない気が」
アマビエ 「だって人類って結局疫病で死んじゃうようなのでしょ」
吉川 「全然愛がないな! もうちょっと寄り添ってくれてるのかと思ってた」
アマビエ 「嫌いじゃないよ? 嫌いじゃないけど、うんこに集ってくる虫いるでしょ。そのちょっと上くらいかなぁ」
吉川 「ハエと同一視」
アマビエ 「だって鱗もくちばしもないって、ちょっとキモいんだよね。カサついてるし」
吉川 「そんなんだから人類に飽きられたんじゃないですか?」
アマビエ 「飽きるっていうのやめて。なんか終わったみたい空気。より身近な存在となり意識をしなくても寄り添っている家族みたいな存在になったと言って」
吉川 「なってないですよ。いい風に言い換えたつもりかもしれないけど、そうはなってないです」
アマビエ 「なってないの? どうすんの?」
吉川 「いや、ボクに聞かれても。お互いにそれぞれの道を進めばいいんじゃないですかね」
アマビエ 「ダメ。それはダメ。私の背中を押し続けてくれなきゃ。メット・ガラに呼ばれるまで」
吉川 「呼ばないですよ。アマビエみたいな格好の人もいるけど。あれに出るのは相当上り詰めないと」
アマビエ 「私なら大丈夫です。後押ししてください」
吉川 「完全に他力本願じゃん」
アマビエ 「青写真はもう見えてるの! あとは人気だけ! さぁ、私の姿を描いて! 描きまくって!」
吉川 「いや、もう無理ですって」
アマビエ 「なんでよ! 描いてよ! 私の華麗なるビクトリーロードを!」
吉川 「描きますけど、それ絵に描いた餅ですよ」
暗転
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