予言

吉川 「こんなところまで、何のようかな?」


藤村 「あなたが偉大なる予言者だと聞いてやってきました」


吉川 「まじかよ! そんな理由で来たの? まさかそんな理由とはね」


藤村 「とぼけないでください。どうせボクが来るのもわかってたんでしょ」


吉川 「ものすごい言いがかりをしてきたな。いくら予言者と言えどもさ、そんな日常のすべてを予言して生きてると思う?」


藤村 「じゃ、ボクがどんなことを予言して欲しいかわからないんですか?」


吉川 「全然わからない。そもそも興味ないしね。そういえば知ってる? 熱愛発覚。例のグラビアの子」


藤村 「そんなこと予言してるんですか?」


吉川 「文春。すっぱ抜くよ。来週発売のやつ」


藤村 「どういうこと? 文春の仕事を請け負ってるの?」


吉川 「来週の文春にどんなトピックが載るか予言してるの」


藤村 「もうちょっとその力の使い道あるんじゃないですか?」


吉川 「一番効率いいから。なんたって文春の話題が一番食いつくんだから、人は」


藤村 「災害とか予言してもいいと思いますけど」


吉川 「それは今一番ダメなんだよ。陰謀論者がいっぱい来るから。もう話通じないやつらだし相手できないからね」


藤村 「だったら経済のこととかは?」


吉川 「それも詐欺師みたいな投資家がいっぱい来るんだよ。意識だけ高いやつら。サロンとか開いちゃってるの。もう大変よ。口ばっかりで責任は全く取らないという一番関わりたくない奴らだから。ついでに商品のこととか予言すると転売屋が異常に来るからね。欲まみれの最悪の時代だよ。文春が一番マシ」


藤村 「色々ご苦労された上でのしょうもない選択だったのか」


吉川 「あ……っ! キミ」


藤村 「なんですか?」


吉川 「いや、なんでもない」


藤村 「なんですか!? まさかボクのことを予言? 一体なにが起こるんですか?」


吉川 「違う違う。そういうのじゃないから」


藤村 「なんなんですか? 言ってくださいよ!」


吉川 「もうなに! 近い近い! 違うよ。なんかチン毛みたいのついてる! マスクに!」


藤村 「チン毛?」


吉川 「ついてる。見なよ~」


藤村 「ホントだ。本当にチン毛だけなんですか? なにか予言があるんじゃ?」


吉川 「そんなのつけてたら気になるでしょうが。ほら、もう。予言者ってだけで親切もできない」


藤村 「何か他にボクに対して言うことはないんですか?」


吉川 「チン毛オンリーだよ。そもそもキミに興味ないし。チン毛にも興味ないしチン毛つけてる人間にも興味ないんだよ。そんなの予言するかよ」


藤村 「いや、あなたほどの予言者だ。ボクがチン毛をつけてここに来ることも予言してたに違いない」


吉川 「してたとしてもどうするんだよ。チン毛は指摘するだろう。たとえわかってたとしても回避方法はないんだよ」


藤村 「災害と一緒か……」


吉川 「そうだけど一緒にされた災害が可哀想だよ。別にすべてのことを知ってるわけじゃないし、どうにもならないんだから予言なんて聞くだけ無駄」


藤村 「それでも予言してもらいたいんです。来週のボクを! どうしても知りたいんです」


吉川 「別に教えるのが嫌なわけじゃないよ。無駄だから。人は予言を聞いたところで思ったようなことを言われなくて逆ギレするか落胆するかしかないんだよ」


藤村 「大丈夫です。教えてください」


吉川 「ええと、あなたの来週ね。うん。『本当だ』って言うね」


藤村 「本当だ? いつ? 何に対してですか?」


吉川 「文春読んだ時」



暗転

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