和菓子
吉川 「わしの作る和菓子が古いだと!?」
藤村 「そうです。師匠の作る和菓子は若いユーザにリーチしないんです」
吉川 「ううむ、確かに若者には好まれないかもしれないがそもそも和菓子と言うのはだな」
藤村 「先日もエスカレーションしましたが甘すぎるという言う客もいました」
吉川 「エスカ? ん? 甘すぎるのはしょうがないんじゃないか、和菓子なんだから」
藤村 「そうは言いますけど初夏に向けたの新作もローンチは早いと思うんですよ。なのでコンバージョンさせるためにはリテイクしなければなりませんし、それに向けてリスケしてコンセンサスを取らないと不味いと思うんです」
吉川 「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 和菓子だぞ?」
藤村 「はい」
吉川 「和菓子にそんな洋風なアレを駆使しないでくれるかな?」
藤村 「え? いえ、もちろん原材料はすべて国産品ですし、それこそがグローバル・スタンダードにおけるブランディングだと思ってますが」
吉川 「それ! その言い方! 言い方が洋風過ぎる!」
藤村 「どれですか?」
吉川 「言ってるじゃん。英語っぽいこと! 意味がわかるようでわからないやつ」
藤村 「ちょっとわからないです。ボクも和菓子を作る上で洋風なものはオミットしてますが」
吉川 「オミット! それ! なんなのそれ!」
藤村 「オミット?」
吉川 「言ってるよね? 英語を。わけのわからない」
藤村 「お味噌のことです。ちょっと噛みました」
吉川 「ちょっと噛んだの? お味噌のこと? 違う感じで使ってなかった?」
藤村 「いいえ? ボクも和菓子職人の端くれですよ?」
吉川 「だってその、さっきの話。半分わからなかったよ。助詞しかわからなかった」
藤村 「ただ現在では生クリームを使ったりするのもデファクト・スタンダードになってる部分はありますからね」
吉川 「はい、言った! 言いました! 英語!」
藤村 「ちょっと神経質すぎませんか? 生クリームは生クリームというしか無いでしょ。和名で言わなきゃだめですか?」
吉川 「違う! クリームじゃない方。そのあとに長いやつ言った」
藤村 「クレーム?」
吉川 「クレームじゃないよ。それはまだわかるもん。もっとわからない言葉。知らない異国の言葉を言いました」
藤村 「言いがかりはやめてくださいよ。ボクは真剣に話してるんですよ? 和菓子の未来について」
吉川 「わしだって真剣だけど、そっちが呪文みたいなこと言って難しくしてるんじゃんか」
藤村 「そんな世代間の対立を煽るようなこと言わないでくださいよ」
吉川 「ジェネレーション・ギャップってやつだ」
藤村 「……?」
吉川 「いや、わかるだろ。わかれよ! せっかくお前の方に寄せて難しっぽい言葉使ったのに」
藤村 「使いたいんですか? いいですよ。どうぞ」
吉川 「グラニュー糖」
藤村 「アグリー」
吉川 「ギューヒ」
藤村 「ステークホルダー」
吉川 「ザラメ」
藤村 「ディシジョン」
吉川 「ネリキリ」
藤村 「マネタイズ」
吉川 「ずるい! そっちばっかり格好いい感じで」
藤村 「しょうがないですよ。師匠は和菓子一筋だったんだから」
吉川 「そう。わしは小さい頃から和菓子以外のことには目も触れず、ただ愚直にこの道だけを信じて突き進んできた」
藤村 「本当ですか? それはファクト・チェックが必要ですね」
吉川 「ふざけんなっ!」
藤村 「え?」
吉川 「ファッキン・ジャップぐらい分かるよ馬鹿野郎!」
暗転
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