献血
藤村 「献血にご協力をお願いしまーす」
吉川 「献血かぁ」
藤村 「どうです? 一発キメていきませんか?」
吉川 「そんな品のない誘い方する? 献血したこと無いんですけど」
藤村 「心配いりません。たとえ売国奴の汚れた血でも歓迎いたします」
吉川 「思想が強いよ。なんだよ急に。別に汚れてないよ」
藤村 「今協力していただきますと、こちらのシールをプレゼントします」
吉川 「注射の後にする絆創膏じゃん。それはサービスじゃなくもれなく頂戴よ」
藤村 「お? 血が騒いでそうですね」
吉川 「別に騒いでないけどな。やってみてもいいかも」
藤村 「念のために伺いますが、ニンニクなどは食べてませんか?」
吉川 「食べてないけど。やっぱりそういうの関係あるの? 刺激物とか」
藤村 「いえ、そういうわけではないんですが。臭いと嫌なので。あと十字架なども持ってませんよね?」
吉川 「吸血鬼いるの? 一体何を警戒してるの?」
藤村 「一応念のためです」
吉川 「十字架してたらどうするんだよ」
藤村 「ちょっとダサいなって思っちゃいますね」
吉川 「失礼だろ。ファッションじゃなく信仰持ってる人もいるんだから。迂闊なこと言うなよ!」
藤村 「あ、でも大丈夫です。あなたは特にそういうアイテムに頼らずとも全体的にダサい感じですし」
吉川 「なにがどう大丈夫なんだよ。お前の発言が大丈夫じゃないよ」
藤村 「では腕の方を出してもらえますか?」
吉川 「右? 左?」
藤村 「今日は左ピッチャーが刺しますので左の方がいいかと思いますが、どちらでもかまいませんよ」
吉川 「どういうこと? 打席と関係あるの?」
藤村 「関係ないです。ただ彼の左腕はスカウトも目をつけてたそうです」
吉川 「全くその情報いらなくない? 左でいいのね?」
藤村 「まず最初に手の甲に『牛乳』と『洗剤』と書かせてもらいますね」
吉川 「なんで? 主婦なの?」
藤村 「忘れないように。もう家にないんですよ」
吉川 「それは自分の手に書けよ。買わなきゃいけないものリストを人の手に書くやつはじめてみたよ。それ絶対忘れるからな」
藤村 「一応念のためです」
吉川 「なんの念にもなってないだろ。お前とは一期一会だよ。買い物に行く時に会わないから」
藤村 「消毒しますけど、アルコールにかぶれたり、溺れたりしたことはないですか?」
吉川 「アルコールに溺れた経験をここで聞き出すの? そんな辛い過去を。別にほじくり返さなくて良くない?」
藤村 「一応念のため」
吉川 「知らなくていいだろ」
藤村 「あー、いい血管してますね。いい血管だって言われたことないですか?」
吉川 「言われたことないですね。献血初めてだし」
藤村 「血管以外なんの取り柄もないと言われたことは?」
吉川 「ないよ! そんな特殊な中傷する人いないだろ」
藤村 「頑張って血の雨を降らせましょう!」
吉川 「そんな発破のかけ方ある?」
藤村 「では続いてちょっとこちらに移動しますのでついてきてください」
吉川 「あ、ここでやるんじゃないんですね」
藤村 「はい。こちらです。足元ちょっと段差になってるので気をつけてください」
吉川 「こっち? なんか人通りがでてきたんだけど」
藤村 「もうちょっと先です」
吉川 「こんなに移動するなら腕むき出しにしなくてよかったんじゃない? ついたあとでいいでしょ」
藤村 「いえ、それが大事なんですよ」
吉川 「そうなの? え? ここスーパーじゃない?」
藤村 「はい。ではこちらでもう一度チェックさせていただきます。えーと、『牛乳』と『洗剤』ですね」
吉川 「お前、血祭りにあげるぞ?」
暗転
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