マジックミラー
藤村 「それではこちらの車内でお話の方をさせていただいてよろしいでしょうか」
吉川 「あ、この車!」
藤村 「おや? ご存知ですか?」
吉川 「い、いえ。知りません」
藤村 「そうですか。この車、明り取りのためにこちら一面がマジックミラーになってるんですよ」
吉川 「わぁ、本当になってるんだ! すごい! あれ、これカメラ?」
藤村 「そちらは一応記録用に録画しているだけで、どこに出すというものでもありませんので。もしご不安なようでしたら片付けますが」
吉川 「いいですいいです。全然大丈夫です」
藤村 「そうですか。それではお話の方なんですが」
吉川 「はい! それはもちろん。全面的に協力します!」
藤村 「え? まだ何も話してないですけど」
吉川 「あ、そうですね。どういった話なんでしょうか?」
藤村 「実はですね、この石なんですが。大変エネルギーのある希少な石でして。最近ついてないとか、健康が気になる、なんて方に特別にお譲りしているんです」
吉川 「ん? 石? 石から導入するパターンは知らないな」
藤村 「初めは皆さん怪しがるんですけどね。実際に持っていただければそのエネルギーを感じ取れると思います」
吉川 「あー、はい。エネルギーねぇ」
藤村 「ちょっと持ってもらえます」
吉川 「えーと、じゃあ持ちます。あー! 確かに! エネルギーがきますね。結構来てます。大丈夫です。きてますよ」
藤村 「きてますよね?」
吉川 「はい。このエネルギーで?」
藤村 「健康などに効果があります」
吉川 「健康というと、その……。やはり子孫繁栄的な」
藤村 「もちろん、そういった面でも効果はあると思います」
吉川 「ですよね! そういうのですよね」
藤村 「こちら特別にお譲りするということで。いかがでしょう?」
吉川 「それはもちろん。いいと思います。この流れで……アレですよね?」
藤村 「はい。そうしましたら、こちらの書類にサインの方を」
吉川 「サイ、サイン? あぁ、そっか。同意書的な? そういうのちゃんとやらなきゃダメなんですよね」
藤村 「そうですね。サインしていただければ次の段階にお話の方進めますので」
吉川 「次の段階に。はい。します。サイン。……しました!」
藤村 「ありがとうございます。ではサインをしていただけということで続いていつくかのミッションをご紹介させていただきます」
吉川 「来た! そう、ミッション!」
藤村 「ご存知ですか?」
吉川 「……いいえ? 初めてですけど。ただミッションが好きなんです。昔っから、もうミッションと言えばね。トム・クルーズの映画も好きだし、芳本美代子さんも好きだし」
藤村 「はぁ、話を進めてもいいですか?」
吉川 「お願いします!」
藤村 「実はこの石なんですが、将来的にもう少しだけ手に入る予定があります。なので吉川さんにはこの石に見合う人物を見つけてもらい、そして私が今やったような感じで契約していただけたらと思います」
吉川 「石を?」
藤村 「契約が完了しましたらお礼金として10%が吉川さんの元へと支払われます。さらにその方にこのような説明をして、その方が新たな石に見合う人物と契約された場合はその時も5%が支払われるという形になってます」
吉川 「はい」
藤村 「以上です」
吉川 「以上!?」
藤村 「はい」
吉川 「以上?」
藤村 「なにかご不明な点でも?」
吉川 「あれ? え? 石だけ? あれ、この車って」
藤村 「この車は私が特別に借りたもので、吉川さんはどちらか喫茶店などでお話をしていただければ」
吉川 「へ? この車は、違うの?」
藤村 「なにがですか?」
吉川 「なにがって。違うの? この後、色々ないの?」
藤村 「はい」
吉川 「ないの!? ないってどういうこと? え? ミッションでその、素股とかの。え?」
藤村 「なにを言ってるんですか?」
吉川 「どういうこと? もうこっちは破裂しそうなんですけど」
藤村 「破裂? なにがですか?」
吉川 「あの、期待で。胸が」
藤村 「そんな時はその石を使っていただければ」
吉川 「石!? そんな万能じゃないでしょ、これ」
藤村 「なにかご不満でも?」
吉川 「だってこのマジックミラー。これ見たら変な期待しちゃうでしょうが」
藤村 「不思議なものですね。以前にも同じようなことを言っていた人がいました。やはり鏡というのは人の本性を映し出すものなのかも知れませんね」
吉川 「でちゃってたかぁ、本性」
暗転
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