謝罪会見

藤村 「この度はハチャメチャにとんでもないことをしでかしてしまい、多くの方にご迷惑をおかけしたことをお詫びします」


吉川 「反省はされてるんですか?」


藤村 「はい。ここに来る前も反省しましたし、昨日も寝る前に反省しました。他にもスキマ時間を使ってチョコチョコと反省しております」


吉川 「反省ってそう要領よくするもんじゃないだろ」


藤村 「本当のことを言えば私が悪いわけじゃないんですが、謝れっていうやつが多いのでそれも含めてお詫びします」


吉川 「反省してないだろ、それはもう」


藤村 「つきましては、会場の外に今回の謝罪会見だけでしか手に入らない特別製のタオル、Tシャツ、ステッカーなどを販売しておりますので、お時間がおありでしたら立ち寄っていただければ幸いです」


吉川 「物販を充実させるなよ。なにしに来たんだよ」


藤村 「また予約制の謝罪チェキですが、まだわずかに数量が残っているようですのでご希望の方はお近くのピンクの謝罪ジャンパーを着たスタッフに声掛けして確認してみてください」


吉川 「スタッフ一丸となって謝罪ジャンパーを制作してるんじゃないよ。謝罪チェキという文化も初めて聞いたよ」


藤村 「そしてここからが緊急告知となります。なんと再来週、謝罪会見第二弾を予定しております」


吉川 「どういうこと? 謝罪を小出しにしてるの?」


藤村 「第二弾では試みも新たに、全く今までとは違う不祥事に対する謝罪を予定しております」


吉川 「不祥事を犯すってこと? もうそれは犯行予告じゃん」


藤村 「会場の広さは今回の倍。そして豪華ゲストも多数予定しております」


吉川 「豪華ゲストって共犯者だろ。芋づる式じゃねーか」


藤村 「司会には吉田豪さんにオファーをしているところです」


吉川 「イベントとしての安定感を高めようとするなよ」


藤村 「今後も盛り沢山の内容で皆様に謝り続けていきますので、応援をよろしくお願いします!」


吉川 「エンタメ化するなよ。そんな気持ちいい顔で謝罪会見してるやつ初めてだよ」


藤村 「はい、どうもすみません。どうもすみませんー! 一番後ろの席にも、ごめんなさいー!」


吉川 「会場全体にしっかりとアピールしすぎだろ」


藤村 「そうだ。SNSに上げる用に会場のみんなと写真を取りますね。写っちゃまずいって人は隠れて」


吉川 「あなたが個人的にアップしなくても謝罪会見なんだから色々なメディアで流れるよ」


藤村 「じゃ、せーので。あいすみませんーといきましょう」


吉川 「会場に来てる人間は謝る理由ないだろ。巻き込むなよ」


藤村 「せーの、あいすみませんー」


吉川 「あいすみませんー」


藤村 「いいねー。臨場感伝わるね」


吉川 「割と全員ノリがいいな。謝罪ムードの人は一人もいないのか?」


藤村 「あ、さっそくいいねが大量についてる」


吉川 「いいねをする人間もどうかと思うよ。なんの集まりだと思ってるんだ」


藤村 「最後に。人は誰でも過ちを犯すし、大きな心で許し合っていけたらいいですよね」


吉川 「言ってることは立派そうだけど、やらかした側がそれ言っちゃダメなんだよ」


藤村 「この後、10分の休憩を挟んでお待ちかねのレジェンドが登場します。なんと15年ぶりの謝罪会見だそうです。水分補給をしっかりして最後までたのしんでください。それでは、すみませんでしたー!」


吉川 「フェス形式でやってるんだ……」



暗転

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る