力が欲しいか
声 「ドクンッ! ……が……しいか?……」
吉川 「なんだ、この声は?」
声 「ドクンッ! ……力が欲しいか?」
吉川 「これはひょっとして私に秘められた血みたいなものが語りかけてきてるのか? でもなんでこのタイミングで」
声 「ドクンッ! ……力が欲しいか?」
吉川 「急にそんなこと言われても」
声 「ドクンッ! ……そうでもないか?」
吉川 「あ。割と話通じるタイプなのかな? はい。今は大丈夫ですけど」
声 「ドクンッ! ……あまり無理しないように」
吉川 「優し! そんな気遣ってくれるんですか?」
声 「ドクンッ! ……血圧もちょっと注意しろよ」
吉川 「心に直で語りかけられると身が引き締まるな」
声 「ドクンッ! ……レジ袋はご必要ですか?」
吉川 「え? 魔族の血みたいなものが呼びかけたりしてるんじゃないの?」
声 「ドクン! ……一枚5円になりますが、レジ袋はご必要ですか?」
吉川 「レジの人なの? 大丈夫です。エコバック持ってるんで」
声 「ドクンッ! ……良い心がけだ。我はSDGsと共にあり」
吉川 「そんな意識高いタイプの心の声だったんだ」
声 「ドクンッ! ……スタンドの時間です。立ち上がって一分ほど動きましょう」
吉川 「アップルウォッチなの? 座りっぱなしだと健康に悪いし。行き届いてるな」
声 「ドクンッ! ……他になにかありましたらお声掛けください」
吉川 「お声掛けに応じてくれるの? そんな便利使いしていいやつなの?」
声 「ドクンッ! ……ヘイシリと呼びかけてみてください」
吉川 「SIRIなの? SIRIが心に直接語りかけてきたの? シンギュラリティにも程がある」
声 「ドクンッ! ……今週のジャンプもう読んだ?」
吉川 「フレンドリーだな。そんな話題まで振ってくれるの?」
声 「ドクンッ! ……まだだったらゴメン。ネタバレすると悪いから黙ってる」
吉川 「気遣いできてるなー。気遣いはいいんだけど、呼びかける時に心臓がドクンッってものすごい鼓動するのビックリするな」
声 「ピンコンピーン! ……音声を再び変えるのは設定からできます」
吉川 「余計SIRIっぽくなっちゃったな。ドクンッの方がよかったわ」
声 「ドクンッ! ……あなたはこのままでいいのですか?」
吉川 「なに? 急に焦燥感を煽るようなこと言いだして」
声 「ドクンッ! ……疫病や天災、戦争など放っておいたらこの星はもたないところまできています。それなのにあなたはそのままでいいのですか?」
吉川 「すごい啓発してくるな」
声 「ドクンッ! ……あなたならできる。この世界をかえることも」
吉川 「できるの? ボクに? 大学も落ちたのに?」
声 「ドクンッ! ……さあ望みなさい。力を!」
吉川 「力が欲しい!」
声 「ドクンッ! ……当店のポイントカードはお持ちでしょうか?」
吉川 「その人じゃないだろ! レジじゃなくて力関係の人呼んで!」
声 「ドクンッ! ……力が欲しいか?」
吉川 「欲しい!」
声 「ドクンッ! ……すみません。上手く聞き取れませんでした」
吉川 「なんでだよ! そのための声じゃないの? もっと敏感に聞き取ってよ」
声 「ドクンッ! ……力が欲しいか?」
吉川 「欲しい!」
声 「ドクンッ! ……三ヶ月のトレーニングプログラムを設定しました」
吉川 「地道な努力で獲得するやつなのかよ! もっとズルしてすごい結果だけもらえるのかと思った」
声 「ドクンッ! ……手っ取り早く旨味を得るのをお望みですか?」
吉川 「そうだよ。そう言うのが欲しい」
声 「ドクンッ! ……これは特別な方にだけご紹介しているのですが、投資用のマンションがございまして……」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます