悪魔憑き
神父 「あなたは悪魔に取り憑かれている!」
吉川 「まさか、私が?」
神父 「思い当たるフシはありませんか?」
吉川 「悪魔に……。いえ?」
神父 「例えば意識のない間に恐ろしいことをしていたとか!」
吉川 「……ないと思います」
神父 「いいえ、ある! 取り憑かれてるのだ!」
吉川 「あなたが怖いよ。なんでそんなこと言うの?」
神父 「例えばでかけていてふと『あれ? 家の鍵閉めたっけ?』と不安になることはないか?」
吉川 「ありますよ。たまに」
神父 「やはり意識を乗っ取られてる。恐ろしい」
吉川 「乗っ取られてないでしょ。鍵閉める瞬間だけ」
神父 「だから記憶に無いのです。たとえば枝豆を食べながらTVを見ている時、ふと気づくと思ったより枝豆の殻がたまっていて『え? こんなに? いつの間に?』と驚くことはないか!」
吉川 「枝豆はね、そういうところあるから」
神父 「間違いない。悪魔に意志を乗っ取られ、そのすきに大量の枝豆を食べさせられたのだ!」
吉川 「そういうものなの? 悪魔って。そのくらいの被害なら別にかまわないんだけど」
神父 「起きてボーっとyou tube見てたらもう日曜の16時と気づいて『何にもしないで終わっちゃった』と絶望することはないか?」
吉川 「あるけどさぁ」
神父 「悪魔はいつだって高評価とチャンネル登録を呼びかけてくるものだ」
吉川 「悪魔ってそんな細かいことまでしてるの?」
神父 「何をしたというわけでもないのに、なぜか周りの者がよそよそしく腫れ物に触れるように扱われたことはないか?」
吉川 「あー。ひょっとしてあの時?」
神父 「あなた割と無神経な所あるから気をつけなさい」
吉川 「それは悪魔のせいじゃないのかよっ! ボクの人間性に急に説教しないでよ」
神父 「大至急祓わなければ大変なことになる。この私はエクソシストとして修業をし、ついには周りの者からエロテロリストと呼ばれるまでに至った」
吉川 「そんな呼び名、インリン・オブ・ジョイトイしかされてないだろ」
神父 「悪魔よ! その身体から出て行け!」
吉川 「うわっ、なにこれ? 聖水?」
神父 「青汁だ」
吉川 「なんでだよっ! なんで青汁かけるんだよ。シミになっちゃうよ」
神父 「TVを見てたら、苦労して身体を壊しかけたおじさんを救ってくれたのはこの青汁ってドラマやってたから」
吉川 「あのドラマ仕立てのCMを真に受けるなよ」
神父 「きっとあのおじさんも悪魔憑きに」
吉川 「青汁で治ったんなら生活習慣の問題だろ。そんな聖なる効力ないよ」
神父 「ならばこの養命酒で!」
吉川 「かけるなよ! 用途違うよ。それも健康問題で悪魔と関係ないだろ」
神父 「さっきから人のあげ足ばかり取りやがって。この悪魔め」
吉川 「つっこんでるのはボクの自主性だよ。そっちがおかしいんでしょうが」
神父 「こっちはもう養命酒で仕上がってるんだ! お前も浴びるほど飲め!」
吉川 「そんなに大量に飲むものでもないよ! うぷっ」
神父 「私の酒が飲めないというのか!」
吉川 「ものすごいハラスメントしてくる神父だな」
暗転
明転
神父 「すみません。私、昨日のこと全然覚えてなくて。たぶん悪魔のせいだと思うんですけど」
吉川 「酒のせいだよ」
暗転
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