運命の戦士

託宣者 「1万年に一度、この世界を支配しようとする魔界の代表者と戦う。お主はその戦士に選ばれたのだ」


吉川  「このボクが?」


託宣者 「そう。1万年前に辛くも勝利した人間はその後地上で繁栄した。これからの1万年の運命がお主にかかっておるのだ」


吉川  「そんな無理です。肩の荷が重すぎます」


託宣者 「決められたことだ。お主が逃げればそれで不戦敗。人間界は魔界に支配される」


吉川  「なんでボクなんですか!? 格闘技だってやったことないんですよ!」


託宣者 「勝負は格闘技ではない。乳首相撲だ」


吉川  「なんて?」


託宣者 「乳首相撲で命運が決まるのだ!」


吉川  「な、なんですか。乳首相撲って?」


託宣者 「それぞれ代表者の乳首を洗濯バサミでつまんで引っ張り合う。魔界と人間界は常にこの勝負で戦ってきた」


吉川  「乳首相撲で? 1万年前も?」


託宣者 「もちろん表の歴史には残っていない。しかしその英雄の勇姿は様々な神話で語り継がれている」


吉川  「乳首相撲が? そんな神話聞いたことないけど」


託宣者 「神様ってだいたいおっぱい丸出しだろ。あれはそういう意味」


吉川  「おかしいだろ。1万年前に洗濯バサミがあるか?」


託宣者 「人間界にはまだなかったであろうな。しかし魔界といえば洗濯でお馴染み。鬼の居ぬ間に洗濯などということわざにもそれは表れておる」


吉川  「そうなの? 本当に洗濯をしていたのが由来なの?」


託宣者 「もちろんだ。シミ抜きだってお手の物」


吉川  「そんなクリーニング屋みたいな場所なの、魔界って」


託宣者 「前回の戦いから1万年。ようやく人類は自らの手で洗濯バサミを発明するに至った。今回はここに勝機があるはずだ」


吉川  「前回は魔界の洗濯バサミだったから? あんまり変わらないと思うけど」


託宣者 「魔界の洗濯バサミは挟むところがピラニアの口みたいになってるのだ」


吉川  「なんのために! それは洗濯にも向いてないだろ」


託宣者 「ガッチリホールドするから引っ張る力に強い」


吉川  「だったら負けじゃん。人間界の洗濯バサミじゃそんなにガッチリいけないよ」


託宣者 「そこはお主次第だ」


吉川  「なにがどうボク次第なんだよ。乳首なんてテクニックを発揮する余地がなさすぎだろ」


託宣者 「お主が運命の戦士に選ばれた理由をよく考えるが良い」


吉川  「神がバカだからだろ? それ以外ないよ」


託宣者 「人類の命運がお主の乳首にかかっておるのだぞ」


吉川  「肩にかけろよ! なんで乳首にかけるんだよ。人類だって乳首なんかに命運賭けたくないだろ」


託宣者 「お主の乳首は洗濯バサミがシンデレラフィットするのだ!」


吉川  「なんでだよ! 普通の乳首だよ! 今まで一度も洗濯バサミを噛ませたことないよ」


託宣者 「試しに挟んでみい」


吉川  「はっ!? まるであつらえたようにピッタリ!」


託宣者 「わかったか。なぜお主が選ばれたのか」


吉川  「そうか! 半信半疑だったけど、ボクは選ばれた運命の戦士だったんだ」


託宣者 「勝負まで時はない。さらなる修行に励むのだ」


吉川  「この乳首なら勝てる。そんな事する必要ない。魔界のどんなやつが相手だろうと一捻りにしてやる。主に乳首を」


託宣者 「増長するな! 相手も魔界を代表する戦士。その乳首の力は計り知れないぞ」


吉川  「一瞬で決めてやる! 乳首を洗って待ってろ!」


託宣者 「鬼の乳首を取ったような顔をするのはまだ早い!」



暗転

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