ギルド

吉川 「すみません。冒険者なんですが、なにかクエストありませんか?」


受付 「冒険者さんですね。ランクの方はいくつでしょうか?」


吉川 「初めたばかりなんでまだEです」


受付 「ランクEですね。かしこまりました。それでしたら……。今あるクエストですと、このバカっぽい帽子を被って一日過ごすってのがありますが」


吉川 「バカっぽい帽子を? それは一体どういう?」


受付 「かぶるんです。それで一日過ごしてください」


吉川 「それは何かの役に立つんですか?」


受付 「いいえ?」


吉川 「え? 誰の役にも立たないの? 何なのそのクエスト。報酬とかどうなってるの?」


受付 「ポイントカードにハンコ2つですね」


吉川 「ポイントカード?」


受付 「200個ハンコを貯めると、ギルド特製ポシェットと交換できます」


吉川 「いらない! そのいらないポシェットのために200個貯められないよ。もうちょっと他のないの?」


受付 「ランクEですと……」


吉川 「草むしりとかでもいいよ」


受付 「草むしりはランクBからになりますので」


吉川 「草むしりで!? そんな危険なの?」


受付 「いや、特に。わざわざ冒険者に頼むことでもないので需要が少ないんですよ」


吉川 「そういう需要とかもあるのか」


受付 「あとランクEですと、この無茶苦茶臭い篭手の臭いをかぐっていうのがありますね」


吉川 「なんなんだよ。その誰の役にも立たないクエスト。それやるといくら貰えるの?」


受付 「ハンコ1つです」


吉川 「ポイントカードじゃなくてさ。現金が欲しいんだけど」


受付 「あ、すみません。そこの食器下げてもらえます?」


吉川 「それでいいです。これですか? この食器?」


受付 「ありがとうございます」


吉川 「今のはどういう報酬が?」


受付 「は? いえ、ただお願いしただけですけど」


吉川 「ただのお願いを混ぜないでよ! クエストかと思って嬉々としてやっちゃったじゃん」


受付 「あとはドラゴンの退治を……」


吉川 「そういうのあるの? ランクEで? いやぁ、できるかなぁ」


受付 「した冒険者に『格好いいですね』など賞賛を送るというクエストがあります」


吉川 「あ、言うだけ? そういう細かい手配とかもギルドでやってたんだ」


受付 「そうですね。すべてのことはこのギルドでやってます」


吉川 「すべての? 世界の? それは怖いな。じゃあ『ここは○○の村です、ようこそ』とか言うのも?」


受付 「それはランクDからですね」


吉川 「あー、あの人クエストやってる人だったんだ。なるほどねぇ。そういうシステムなのか」


受付 「ランクEだと会話の語尾にチョモチョモをつけて一週間過ごす、とかになりますね」


吉川 「なんでそんな羞恥系のクエストしかないわけ? なんなんだよそれ!」


受付 「あー、困ります。ギルドの受付に因縁をつけるのはランクCからなんで」


吉川 「これもクエストになってるの? こういうことをして生計立ててる冒険者もいるってこと?」


受付 「だいたい6,7割はそんな感じですね」


吉川 「冒険者しょうもなさすぎるな」


受付 「あ。ちょうどよかった! ランクEでピッタリのクエストがありますよ」


吉川 「本当? どんなの?」


受付 「今すぐここから立ち去って二度と顔を見せないというのです」


吉川 「あぁ、それもクエストなんだ。世知辛いね」



暗転

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