陰謀論
吉川 「これは世界でも限られたものしか気づいていない。しかし真実なのです!」
藤村 「なんだってー!?」
吉川 「我々は一人でも多くの人に、この真実を伝えるべく努力しているのです」
藤村 「つまりそれって……」
吉川 「はい」
藤村 「ドッキリってことですか?」
吉川 「はい、え? ドッキリ?」
藤村 「みんな今まで知っていて黙ってたんですよね。俺を騙そうと」
吉川 「まぁそうですね」
藤村 「な~んだ。どおりでおかしいと思ったんだよ。ドッキリかぁ」
吉川 「いや、ドッキリっていうかですね」
藤村 「まじで騙されたよぉ。真実があるとはねぇ」
吉川 「まぁ真実に目覚めてくれるならそれでいいんですけど」
藤村 「あれ、カメラ?」
吉川 「カメラ? いや、カメラはないです」
藤村 「わかってるわかってる。なるほどね。ドッキリかぁ」
吉川 「ドッキリではないんです」
藤村 「でも俺は騙されてたんでしょ?」
吉川 「はい。そうです」
藤村 「じゃあドッキリじゃん。ただちょっとおかしいかなって思う部分はあったんだよ?」
吉川 「まず言っておきたいのは、騙されてたのはあなただけではなく、世界の多くの人たちが今なお騙されているんです」
藤村 「OKOK。つまり今度は俺が仕掛ける側になるわけね。こういうの待ってた!」
吉川 「仕掛けるというか、真実を伝える側です。まだ気づいてない人に、本当のことを啓蒙していく」
藤村 「だから出ていくんでしょ? 看板持って。ドッキリでしたー! って。最高じゃん」
吉川 「ドッキリじゃないんですよ。真実を伝えるんです」
藤村 「だから種明かしするんですよね」
吉川 「種明かしでもないんです。みんな騙されてるんですよ。あの人も、あの人も! 全員騙されてるんです」
藤村 「はいはい、わかりますよー。仕込みましたねー!」
吉川 「仕込んでないの。勝手に騙されてるの。世界に」
藤村 「そうですね。そこで俺が颯爽と。騙されましたねー! って打ち明けに行くんですよね」
吉川 「ノリが違うんですよ。そうだけど、軽々しい感じじゃなくて。だって世界に騙されてたんですよ? 政府とか。マスコミとか。大企業とか。全部です。全部に騙されてるんです!」
藤村 「それはビックリするでしょうね。『騙されてたと知ってどんな気持ちですか?』なんて聞きたいですねぇ」
吉川 「リアクションを楽しむのが目的じゃないんですよ」
藤村 「えー、でもリアクションも見たいでしょ? 人間なら誰だって」
吉川 「そこの目的が違うんです。ドッキリとは違う。我々はその先を見据えているわけです」
藤村 「あー、わかった! ドッキリでした。のあとに更にもうワンアクション。ドッキリを仕掛けてた側が騙されてたパターン? そうでしょ?」
吉川 「違います。我々は騙されてないから。我々こそ真実を知ってるものだから」
藤村 「それそれ。そのリアクションよ。騙してた側という思い込みが無防備になるんですよね。あなた、騙されてるんですよ!」
吉川 「いいえ。我々は正しい!」
藤村 「ほら、あそこ! 見て見て、あれカメラですよ」
吉川 「えぇ?」
藤村 「やられましたねー! 世界の真実なんて嘘なんですよ。そんな都合のいい話あるわけないじゃないですか。騙されちゃいましたね」
吉川 「わ、私が、騙され……」
藤村 「今どんな気持ちですか?」
吉川 「わからない。なにもわからない。私は、私は一体……」
藤村 「いいリアクションですねー。じゃ、今度はこっちを見て、ご一緒に。ピースして大成功って言いましょう。せーの!」
吉川 「大・成・功!」
テッテレー♪
暗転
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